トランプ米大統領は、経済への不満を抱える有権者の支持を追い風にホワイトハウスに返り咲き、物価の引き下げや国家の「黄金時代」を約束した。

では、今までのところ政権運営はどうだろうか。波はあったものの、2025年の米経済は堅調な成長を遂げ、エコノミストはこの傾向が2026年も続くと予想している。

23日発表された7-9月(第3四半期)の実質国内総生産(GDP)は2年ぶりの高い成長率を記録した。その背景には底堅い個人消費や企業設備投資がある。

ただ、こうした主要指標の裏には必ずしも明るい材料ばかりがあるわけではない。雇用の増加は力強さを欠き、限られた業種に集中しているほか、依然として物価の高さが懸念材料となっており、トランプ氏の前任者バイデン氏の時代から続くアフォーダビリティー(暮らし向き)を巡る問題が国民の負担となっている。

以下は、2025年の米経済の動向を示す一連のチャート。

労働市場

2025年は関税の影響や外国からの観光客減少、さらに職場への人工知能(AI)の導入拡大による構造変化を背景に、求職者には厳しい年となった。失業率は11月に4.6%へ上昇し、年初から0.5ポイント悪化。2021年以来の高水準となっている。

全体として雇用の伸びは鈍く、わずかに見られた雇用増も大半が医療・福祉分野に集中していた。この分野を除くと、米国全体の雇用はむしろ減少した。今年は製造業の雇用が7カ月連続で減少している。

 

就労者にとっても、賃金の伸びは鈍化している。平均時給や雇用コスト指数などの指標は、いずれも2021年以来の低い伸びにとどまっている。アトランタ連銀のデータによれば、4月から11月にかけて、少なくとも13%の雇用者の賃金が前年から全く上昇しなかった。

採用が鈍い環境の中で、4年制大学卒の労働者が特に厳しい影響を受けている。11月のこの層の失業率は2.9%と、他の多くの層と比べれば依然として低い水準だが、不況期を除けば過去に例のない高さとなった。

一方、クリーブランド連銀の調査によれば、月次の就職率の推移からは、若年層の大卒者がこれまでのように高卒者に対して就職面で明確な優位性を持たなくなっていることが示唆されている。

今年に入って黒人の失業率も急上昇しており、1月の6.2%から11月には8.3%に達した。これは一部に、労働市場に新たに参加する黒人労働者の増加が影響している。

消費者物価

今年のインフレ動向を一言で表すなら、「あまり変化がなかった」ということになる。コロナ禍のピークからは大きく低下したものの、それ以前の10年間に米国民が慣れ親しんだ水準と比べれば、依然として高止まりしている。

消費者物価指数(CPI)統計の総合指数の伸びは11月に2.7%となり、2025年の平均と同じ水準だった。ただし、政府機関の一時閉鎖によるデータの混乱がこの数値を下押しした可能性もある。米連邦準備制度理事会(FRB)が重視する他の物価指標でも、これに近い結果が出ている。

 

前任者の任期中に起きた物価高騰がトランプ氏の当選を後押ししたと、多くの専門家は見ている。だが今では、生活費の高騰に対する有権者の懸念はトランプ氏自身の責任となっており、11月の中間選挙の結果を見る限り、その問題が依然として政治的な影響力を持ち続けていることがうかがえる。

トランプ大統領にとってプラス材料となるのは、関税措置が一部のエコノミストが懸念していたような急激な物価上昇にはつながっていない点だ。有権者の関心が高いガソリン価格も、値下がり傾向を示している。ただ、先月に民主党が勝利した選挙戦で主要な争点となった電気代の上昇が、今後ガソリンに取って代わる兆しもある。

ホワイトハウスのデサイ報道官は声明で「過去1年でインフレは沈静化し、経済成長は加速した。金利は低下し、実質賃金もついに上昇した」と指摘。「新年に向けてやるべきことは多いが、トランプ大統領の政策が着実に効果を発揮しつつある今、米国民は最良の時代はこれから来ると安心できるはずだ」と強調した。

 

貿易戦争

トランプ大統領による経済政策で最も劇的な転換は、通商保護主義への傾斜だろう。大統領は2025年に関税を引き上げ、過去およそ100年で最も高い水準に達した。もっとも、中国に対する措置を中心に、一部の引き上げ分は政権自身がその後撤回している。

 

トランプ大統領は、高関税によって政府の歳入を確保し、数十年にわたって続いてきた米国の貿易赤字を縮小させ、国内の設備投資を促進すると主張している。

このうち、歳入の確保という点では輸入関税が機能しており、2025年後半には月あたり約300億ドルのペースで歳入を生み出している。貿易赤字の縮小については、統計の変動が激しく、今のところ判断は分かれている。

トランプ氏の当選を受け、年初には米企業が新大統領による関税発動前に物資を確保しようとしたことで、米国への輸入が過去最大級の急増を記録。その後、貿易赤字は再び縮小傾向に転じている。

設備投資

トランプ氏が掲げた貿易戦争の3つ目の目標である国内の設備投資の促進については、今のところ評価が分かれている。12月23日に発表された最新データによれば、2025年の第3四半期までの企業の固定資本投資は堅調な伸びを示した。

 

ただし、この投資拡大のほとんどは、コンピューター機器やソフトウエアへの支出増によって支えられている。今後についてエコノミストは、トランプ氏が打ち出したワン・ビッグ・ビューティフル・ビル法や、AI分野への継続的な投資が、2026年の設備投資を押し上げると予想している。

原題:Here’s How the US Economy Fared Under Trump in 2025(抜粋)

--取材協力:Mark Niquette.

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