モノの価値を「見える化」する新しい家計管理
年末が近づくと、多くの家庭で大掃除が始まります。クローゼットの奥、押し入れの隅、物置の棚。普段は目を向けない場所から、「そういえば、これ何年も使っていないな」というモノが次々と現れてきます。
こうした「使っていないけれど、なんとなく置いてあるモノ」は、実は私たちが想像する以上の価値を持っているかもしれません。
株式会社メルカリの依頼で監修した「2025年版 日本の家庭に眠る"かくれ資産"調査」では、1年以上使用しておらず、理由なく家庭内に保管しているモノを「不要品」とし、その価値を金額換算したところ、日本全国で推計約91兆円、国民一人あたり平均約71.5万円にのぼることが明らかになりました。
これは、家計簿には現れない、けれども確かに存在する「暮らしの資産」です。
「かくれ資産」91兆円が示すもの
私たちは通常、家計を管理する際、預金残高や投資資産の増減には敏感です。しかし、家庭の中に眠るモノの価値については、なかなか意識が向きません。
今回の調査で明らかになった91兆円という数字は、金融資産だけでは捉えきれない「暮らしの資産」の大きさを物語っています。
この「かくれ資産」の内訳を見ると、最も大きな割合を占めるのは「ファッション用品」(33.6%)で、次いで「ホビー・レジャー」(22.2%)、「書籍・音楽・ゲーム」(21.2%)、「家具・家電・小物」(20.0%)と続きます。
私たちの日々の暮らしに密着したこれらのカテゴリーに、思いのほか多くの価値が蓄積されていることがわかります。
興味深いのは、年代による違いです。「かくれ資産」は年齢が高いほど増える傾向があり、60代では平均約100万円と、20代(約49万円)の2倍以上に上ります。
年齢を重ねるほど蓄積された物の価値が大きくなる傾向は、人生の各ステージで購入したモノが家庭内に留まり続けることを示しています。
子育て期に必要だった用品、かつての趣味の道具、以前の仕事で使っていたもの。ライフステージの変化とともに、使わなくなったモノが静かに積み重なっていくのです。
地域別に見ると、一人あたりの「かくれ資産」が最も多いのは中部地方で約90万円、次いで近畿地方で約81万円、中国・四国地方で約76万円となりました。
東京では約64万円と、大都市圏では相対的に少ない傾向が見られます。この違いには、住宅の広さと可処分所得という二つの要因が関係していると考えられます。
地方では都市部と比べて住宅が広く、収納スペースに余裕があることが多いため、モノを保管し続けやすい環境にあります。
一方で、可処分所得が相対的に高い地域では、モノを購入する機会も多く、結果として家庭内に蓄積されるモノの総量も増える傾向があります。
中部地方や近畿地方は、この二つの条件が重なる地域と言えるでしょう。
対照的に、東京のような大都市では、購買力があっても、住宅事情から定期的にモノを整理する必要に迫られることが多く、「かくれ資産」が相対的に少なくなっているのかもしれません。


