30年前は、円高是正のための利下げ
政策金利が0.75%に達するのは、1995年以来、30年ぶりのことです。この30年間、日本は0.5%を超える政策金利を経験しておらず、0.75%はまさに「未体験ゾーン」です。金利と言う点では、長いデフレの期間を脱したわけで、歴史的な出来事と言っていいでしょう。
30年前の1995年は、日米自動車摩擦がピークを迎え、円相場が一時79円台まで上昇するという「スーパー円高」の時代でした。当時の政策金利は公定歩合で、日銀は95年4月に公定歩合を1.75%から1.0%へと一気に0.75%引き下げたのに続き、9月にも1.0%を0.5%へと引き下げました。0.75%という水準は、この時以来と言うわけです。
95年の大幅利下げは、もちろん円高阻止のためで、9月の追加利下げで90円台だった円相場を100円の大台に何とか押し戻したのでした。今回の政策変更が150円を超える円安を止めるための利上げだったことを考えると、まさに隔世の感があります。
日銀の利上げ継続が、まず重要
今後、異常な円安を是正していくためには、まず、日銀が今後も利上げを続けられるかが、最も重要な焦点です。植田総裁は、「今回の利上げ後も実質金利は極めて低い水準だ」と述べて、利上げの余地が十分あることを強調しました。
ただ、高市政権との調整は、それほど容易ではなさそうです。高市総理自身、かつて「今、利上げをするのはアホや」と語ったように、基本的には金融緩和論者で、ブレーンにも「高圧経済」に拘る面々が並んでいます。
今回、高市政権が利上げを容認したのは、円安が物価高に及ぼす影響を考えてのことです。実際に円安が進んだり、長期金利が上昇したりしなければ、やすやすと利上げを認めはしないのではないでしょうか。逆に言えば、利上げを認めるのは、円安が進んだ後の話なので、為替市場への影響は、結局、「後手」にまわり、けん制効果は限定的になってしまいます。市場に先んじて利上げを貫けるかどうかが、為替市場の心理には大きな影響を及ぼすでしょう。
現時点で市場では、次の利上げを来年夏頃と見る向きが多く、具体的には、その前倒しもあり得るという日銀の姿勢が見えるかどうかが、大きなポイントです。