(ブルームバーグ):主要株価指数が最高値を更新した日本株市場。しかし投資に必要な最低金額も上昇しているため、上場企業は個人投資家が買いやすくなるように株式分割を積極化している。
株式市場を運営する日本取引所グループは売買単位を100株と定めている。株価水準が高くなり、東京証券取引所に上場する個別銘柄の「最低投資金額」の中央値は米国の10倍以上だ。株価が2万255円のアドバンテストを買うには最低でも203万円が必要となる。シンガポールや上海でも100株単位を採用しているが、米国や英国では1株からの売買が可能で、少額の資金で投資できる。
東証の調査によると、個人投資家が求める投資の単位は10万円程度。これに対して現状では東証株価指数(TOPIX)構成銘柄の約1割が50万円以上となっている。東証は望ましい投資単位を「50万円未満」と明示し、上場企業に引き下げを働きかけている。
最低投資金額の引き下げには株式分割が効果的だ。ニッセイ基礎研究所の森下千鶴研究員は「企業の間で株価水準ではなく最低投資額への意識が高まってきた」と指摘。夏以降に株価が大きく上昇した結果、「株式分割を選択する企業が一段と増えている」と話す。株式分割を実施する企業はことし、2018年以来の高水準になった。
ソフトバンクグループは11月、半年余りで株価が約4倍になった結果、投資単位当たりの金額が200万円を超えたため、株式分割を行うと発表した。投資家が株式を買いやすい環境を整え、投資家層のさらなる拡大を目指すとしている。
実際に株式分割は個人投資家の増加につながっている。日本取引所Gが発表した24年度株式分布状況調査によれば、株式分割を実施した企業では個人株主が267万人増加した。24年3月に1株を4株に分割したスズキの場合は53%増えた。「株式分割を行えば、買ってみようかという流れはある」とニッセイ基礎研の森下氏は話す。
個人株主の増加は企業にとって利点がある。日本でのアクティビスト(物言う株主)による株主提案件数は昨年、過去最多の146件になった。アクティビストが活発に行動する中、「物言わぬ株主として個人の比率を高めたい」という企業の思惑もあると大和総研金融調査部の瀬戸佑基研究員は指摘する。
新しい少額投資非課税制度(NISA)の浸透も株主の裾野拡大を後押しする。野村アセットマネジメントの調査によると、成長投資枠のNISA口座では29%が個別株を保有している。
一方、企業にとって株式分割は配当金の郵送や株主総会運営など事務手続きのコストがかさむマイナス面もある。また、株式分割後に株価が上がる傾向はあるものの、持続性には疑問がある。ブルームバーグがまとめた過去10年のデータによると、分割発表から1カ月後の平均株価上昇率は0.6%にとどまる。
--取材協力:堤健太郎、佐藤円裕.
もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
©2025 Bloomberg L.P.