はじめに
インド経済は急速な人口増加により、世界最大規模の労働市場を形成しつつある。国連世界人口推計2024年版によれば、インドの労働年齢人口(15~64歳)は2025年時点で10億人に達すると推計されている。
しかし、この豊富な労働力が必ずしも高い生産性や所得向上につながっているわけではない。
近年、労働参加率の上昇や失業率の低下といった改善がみられる一方で、非農業化の停滞や非公式雇用の高止まりなど、構造的な課題は依然として残されている。
本稿では、インドの労働市場を「量的拡大」と「質的停滞」という二重構造として捉え、その背景にある要因を明らかにした上で、政策対応の方向性を検討する。
