欧州連合(EU)の執行機関、欧州委員会は5日、イーロン・マスク氏のX(旧ツイッター)が、EUのデジタルサービス法(DSA)に違反したとして、1億2000万ユーロ(約216億円)の制裁金を科した。EUのデジタル規制に反発している米ホワイトハウスと、EUとの緊張が高まりそうだ。

DSAに基づく制裁金は初。発表によると、欧州委員会は、Xの有料の認証バッジがユーザーの誤解を招いたと結論づけた。また、Xが研究者によるデータアクセスを阻害したほか、内容や出稿者などの広告情報を公開するデータベースを適切に設定しなかったとしている。

制裁金額は、欧州委員会が対象とするか検討していた、宇宙、インフラ、神経科学などの事業も含めたマスク氏の収益に基づくものではなく、事前の予想額を下回った。

Xには問題の解決策を提示するまでに60日、実際に是正措置を講じるまでに90日の猶予が与えられ、対応を怠れば追加制裁が科される可能性がある。

今回のXに対する調査の中でも、DSA違反とされるその他複数の項目については、まだ判断が下されておらず、今後さらなる制裁金が科される可能性がある。特に、Xによる違法コンテンツの監視体制や、選挙に関する偽情報対策、ファクトチェック機能「コミュニティー・ノート」の運用など、より深刻な問題に関する調査は、まだ欧州委員会の「予備的判断」の段階にすら達していない。

マスク氏はこれまで、いかなる制裁金に対しても法廷で争う意向を示しており、制裁金の支払いは数年単位で遅れる可能性がある。

米国の反発

総額4670億ドルのマスク氏の資産から見れば、制裁金はごく一部にすぎない。だが、この件はデジタル主権や、インターネット時代における言論の自由やプライバシーといった基本的権利をどう捉えるかを巡り、欧米間の深まる溝を浮き彫りにした。

トランプ米大統領は、EUによる巨額の制裁や、米テック企業への規制強化を繰り返し非難してきた。バンス副大統領は、制裁の発表前、Xに「EUは言論の自由を支援すべきであって、くだらない理由で米国企業を攻撃すべきではない」と投稿していた。

2023年に施行されたDSAでは、違法コンテンツや偽情報への対応を怠っっtったり、透明性規則を順守しなかったりした場合、EUはオンラインプラットフォームに対し、年間の世界売上高の最大6%に相当する制裁金を科せるとしている。

EUは現在、アップル、グーグル、メタといった米国の大手テック企業に対しても、DSAやデジタル市場法(DMA)に基づく調査を進めている。

原題:Musk’s X Fined €120 Million by EU in First Content Law Penalty(抜粋)

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