米FRBは12月利下げへ

一方、アメリカの中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)は、日銀より1週早い、12月8、9日に決定会合を開きます。一時は、パウエル議長が「次回は白紙」と強調するなど、利下げ観測が後退する場面もありましたが、ここにきて、民間の雇用調査会社ADPの雇用レポートで11月の就業者数が前月比3万2000人減少するなど、景気減速を示す指標が相次いでいることから、12月会合で3回連続となる利下げを決定するとの見方が支配的となっています。

さらに、来年に任期を迎えるパウエル議長の後任に、トランプ大統領に近いハセットNEC(国家経済会議)委員長が有力視されていることから、株式市場では、来年もアメリカの利下げ局面が続くとの期待感も高まっています。

市場は日銀の「正常化」を疑問視

アメリカが利下げし、日本が利上げするのですから、本来なら、日米金利差が縮小するだけ、為替相場が円高ドル安に振れるはずなのですが、なかなか、そうはなりません。為替相場は金利だけで決まるわけでもありませんし、そもそも、日銀の金融正常化への決意を、市場は疑っているのでしょう。市場の関心は、すでに次の会合での利上げから、その先に移っているのです。次はできても、次の次は難しそうだ、と。

次回の会合で利上げすると、日本の政策金利は0.75%になります。この30年間、日本は0.5%を超える政策金利を経験したことがありません。超円高時代の1995年9月に公定歩合が1.0%から0.5%に引き下げられて以来の高い水準になります。

さらに、その次の利上げとなると、政策金利は1.0%に達します。直感的には、金融緩和指向の高市政権説得は、なかなか難しそうに見えます。

論理的にも、かねて植田総裁は、日本の中立金利は1.0から2.5%の間だろうと述べており、1.0%は、その下限にあたります。中立金利とは、景気を熱しも、冷ましもしない金利水準のことです。政策金利を中立金利の水準に持っていくのであれば、物価目標が安定的に2%に達した後でなければ、辻褄があいません。「金融緩和の度合いを調整する」という今の理屈では、政策金利を中立金利水準にまで引き上げることを説明するのは、難しいように思えます。