ボラティリティー(変動性)が高くて当たり前の暗号資産(仮想通貨)でも、特にリスクの高いトークンの下げは著しい。あまりにも多額の損失に、リテール(個人)投資家の間では仕組まれているのではないかという陰謀論さえ広がっている。

マーケットベクターの指数が追跡する中小規模のトークン50銘柄は、年初から70%近く下落。ビットコイン以外の暗号資産(アルトコイン)はこれで、ピーク時から2000億ドル(約30兆9200億円)の時価総額を失った。

個人投資家はアルトコインに資金を投じなくなり、その代わりにゼロ・デー・オプションや暗号ベースの株式ベットなど、新たな投機先に移行している。犬をテーマにしたトークンなども人気を失い、ドージコインは9月高値から50%下落した。

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「多くのトークンは何年も前から、単に市場のサイクルで価値が上がっていたが、その時代は終わろうとしている」と、ブロックチェーンプラットフォームのメガエスを創設中のシュヤオ・コン氏は話す。「今ではサイファーパンクやトレーダー、ウォール街の機関投資家、政治までが市場を左右している。単一のテーマでは動かなくなり、伝統的なバリュエーションの台頭が一部の人にとって不安材料になっている」と説明した。

従来はソーシャルメディアで盛り上がる話題や、デートレーダーのレバレッジ、次の10倍銘柄を狙う期待が価格を動かしていた。このモデルは資金が流入すると活況となり、流出すると急速に崩壊する。そして今では、明確な経済モデルを持つプロジェクトに結びついたガバナンストークンでさえ下落しており、個人投資家の疲弊感を示している。

10月の急落以降、ハイパーリクイッド(中小型銘柄のパーペチュアルスワップを扱うアルトコイン取引拠点)での小型・中型暗号資産デリバティブの日次取引高は、大きく落ち込んだ。対照的にポリマーケットでの予測市場取引は過去最高を記録した。

 

市場の受け皿も変化している。かつてアルトコインへ個人マネーを導いたアプリは、別の賭け方を提供し始めた。ロビンフッド・マーケッツはスポーツ賭博に傾斜している。双子の富豪ウィンクルボス兄弟が創業した暗号資産取引所ジェミニ・スペース・ステーションは、予測取引の提供を準備している。分散型金融プラットフォームのハイパーリクイッドでは、ユーザーが株価指数から未公開株まであらゆる対象に連動する独自の銘柄を作成できる。コインベース・グローバルも提供商品を拡大している。

暗号資産トレーダーのジャック・メルニック氏は、多くの取引をアルトコインから株価連動型の暗号資産商品へ移したと述べた。

「オンチェーンで資金を運用しながら、トラディショナル金融の時代にカバーしていたのと同じ企業の取引ができるようになった」と同氏は語った。「これらのプロダクトはレバレッジが手軽で、暗号資産のカウンターパートよりも合理的なバリュエーションの企業を対象に取引し、実際に収益を生むことができる」と述べた。

多くのトークンはユーザーの実利用に至らず、非公開の資金調達ラウンドを経て過大評価されてから公開されるため、「個人投資家が参加する頃にはすでに、上昇余地の多くが失われている」という。

トークン・ターミナルは一部の例外を除き、過去1カ月で100万ドル以上の収益を上げた暗号資産プロジェクトはわずか十数件にとどまると報告。依然として数千ものプロジェクトが取引されているが、大半は下落基調で価値を支える材料が乏しいという。

ファルコンXのグローバル市場共同責任者、ジョシュア・リム氏は「主流の個人投資家はもはや、過去のサイクルで見られたような凸型のリターンをアルトコインに期待できず、代わりに人工知能(AI)や量子、原子力など新興の投機的セクターに結び付いた株式にそれを見いだしている」と述べた。

原題:Crypto Reels From a $200 Billion Crash as Casino Crowd Moves On(抜粋)

--取材協力:Dave Liedtka.

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