(ブルームバーグ):かつて「月まで届く」とさえ期待された暗号資産が、今や米国債にすら追いつけずにいる。ビットコインは、2025年のピークから約30%下落し、テクノロジー株や短期国債など、ほぼ全ての資産クラスの後れを取っている。
世界最大の暗号資産ビットコインは、以前は「高成長銘柄」「インフレヘッジ」「ポートフォリオ分散の手段」としてもてはやされていた。だが、いずれの役割も果たせないまま、今年を赤字で終える可能性に直面している。
利下げとリスク選好の後退が特徴的な今年、長期国債、ナスダック指数、ビットコイン信奉者らが「時代遅れ」として軽視してきた金も、ビットコインを凌駕する伸びを見せている。
ビットコインが「上回るはずだった」ベンチマークとの比較では、その低迷ぶりは一層際立つ。MSCI新興国株価指数は今年大きく上昇しており、米公益事業株指数でさえ、低ボラティリティ・低成長の安定資産とされるにもかかわらず、ビットコインの下落率を上回るパフォーマンスだ。
ビットコインは18日、一時9万ドルを下回り、7カ月ぶりの安値となった。上場投資信託(ETF)が設定以来取り込んできた資金流入を加重平均した価格にほぼ相当する水準で、ビットコインETFの典型的な投資家が、含み損を抱える状態になったことを意味する。
「飛躍の年」
その後、ビットコイン価格は若干持ち直し、ニューヨーク時間18日午前11時46分時点では、約1.5%高の9万3241ドル前後で取引されている。
多くの人々にとって、今年は暗号資産の「飛躍の年」になるはずだった。米ホワイトハウスは暗号資産に前向きで、新たに認可されたトークン連動型ETFが上場し、機関投資家の資金も流入した。デジタル資産は、主流金融の一角に押し上げられたかに見えた。
だが、高値圏で購入した投資家には、2025年のビットコイン物語は見慣れた展開だ。熱狂、暴落、そして失望の広がりである。変動性は常に高く、信頼性は下がるばかりだ。
分散投資ポートフォリオの中で、ビットコインは関税に起因する株式の売りや下落局面の損失を相殺できず、反発局面でもリターンを押し上げる効果を示していない。他市場が不安定になった時でも、独立した値動きを見せることはなかった。暗号資産を戦略的にポートフォリオへ組み入れていた運用者にとって、この失望は単なる成績の問題にとどまらず、「存在意義」そのものを揺るがしている。
弱気相場入りか
今回の下落の要因を巡る見方はさまざまだ。
10月の急落を原因とする見方もある。この時は、およそ190億ドル相当のレバレッジポジションが一掃され、市場全体に深い心理的傷跡を残した。
一方で、より広範な市場の弱さを指摘する声もある。
デジタル資産分析会社BRNのリサーチ責任者、ティモシー・ミシール氏は、アジアで成長指標が弱い結果となり、中国株が前日夜に下落したことや、世界のハイテク株価も、19日のエヌビディア決算を前に、投資家がバリュエーションを見直し調整があった点を指摘する。同氏は「すでに流動性がひっ迫している中で、相関関係は再び変動が激しい状態に戻った。暗号資産はリスク回避ではなく、むしろマクロ経済の引き締めを、最もレバレッジをかけて表現するものとして取引されている」と語った。
米国のビットコインETF(上場投資信託)からの資金流出も続いている。
シグナルプラスのディレクター、オーガスティン・ファン氏は「弱気相場入りが近いとの声が、ますます大きくなっている」と述べた。
もっとも、ビットコインはいまだトランプ米大統領再選前の水準を大きく上回っている。その歴史は、急落と劇的な回復を繰り返してきたものでもある。長期的に見れば、リターンはいまだに目を見張るものだ。
それでも現時点では、トレーダーらは守りの姿勢を取っている。8万5000ドルまたは8万ドル付近の下値を守るためのヘッジ需要が急増しており、コインベース傘下の暗号資産オプション取引所デリビットのデータによると、年末までにビットコインが過去最高値の12万6000ドル超を再び付ける確率は、5%未満にとどまる。
原題:Great Bitcoin Crash of 2025 Has It Lagging Bonds, Gold and More(抜粋)
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