(ブルームバーグ):自動運転スタートアップ企業チューリング(品川区)は、自動車部品メーカーのデンソーなどから約153億円を調達した。同社のAI技術への関心の高まりを示すものだ。
同社の評価額は約600億円となり、1年前のシリーズA資金調達ラウンドから約4倍に跳ね上がったと事情に詳しい関係者が明らかにした。17日の発表によると、このラウンドには55億円のシンジケートローンも含まれている。
チューリングは、開発した将棋ソフトが日本のトップ棋士を破ったことで有名になった山本一成氏らよって2021年に設立された。完全自動運転システムの開発を目指しており、現在の従業員は約85人。その大半がエンジニアだ。
山本氏は取材に対して、デンソーのような出資者からはチューリングの自動運転への期待が高まっており、いい技術ができたら何とか量産まで持っていきたいとのメッセージを受けていると話した。
またデンソーなど複数の自動車関連企業と自動運転車の製造に向けた協業に関して交渉中という。同社の人工知能(AI)モデルはあらゆる車種に適用可能だが、最初に導入されるのは高級車となる可能性が高いと山本氏は述べた。
チューリングでは複雑なタスクや異常事態への対応能力が限られるルールベースのアルゴリズムに依存せず、ニューラルネットワークの学習にとって完全な自動化を実現しようとしている。この手法は米テスラや英ウェイブ・テクノロジーズなどの企業と共通している。山本氏はまた、「エンドツーエンド」システム開発に向けて米エヌビディアの半導体を採用した。
しかし自動運転の分野では事故や撤退が相次いでおり、困難な課題であることが明確となってきている。
山本氏によると、チューリングはカメラやセンサーで得た現実世界の情報をもとに、ロボットが自律的に動くフィジカルAIの分野で「最先端を走っている会社」であり、日本では類似の企業は極めて少ないと指摘。自社のAIモデルを成功させれば、海外の競合他社を追い抜き、より優れた自動運転システムを求める自動車メーカーからの強い需要を集められると確信しているという。
チューリングは29年には自社の完全自動運転システムを量産車に搭載することを目指している。30年までに1万台以上の車両にチューリングのAIモデルを搭載する目標を掲げるが、正確な台数は製造を担う自動車メーカーとの交渉次第となる。
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