“海外企業”とのトラブルなぜ?
小川彩佳キャスター:
30以上の下請け会社が未払いを訴えているということですが、そもそもなぜこのような事態になっているのでしょうか。

MBS万博担当記者 清水貴太記者:
やはり大きな要因は、工期の遅れです。工期が遅れて、大手のゼネコンが海外パビリオンの工事を請け負いませんでした。これは、海外パビリオンが独創的なデザインを計画していて、これが開幕までに間に合わないと判断し、大手のゼネコンは断ってしまいました。

その代わりこの工事を請け負ったのが、中小規模の建設事業者です。やはり国家プロジェクトということで、「ここは一肌脱いで頑張ろうじゃないか」と、万博のパビリオン工事を請け負うことになりました。ただ、中小規模の事業者は、当然海外の企業や国とは、なかなかこれまでお付き合いはありませんでした。

その中で起こるのが、一つは言語の問題です。例えば図面は全て英語で書かれていますが、業者は日本語しかわからないので、スマホでスキャンをして翻訳を行い、「こんなことが書かれているんだ」と、現場で知りながら図面を読み解いて建てることもあったようです。
また時間がないので、契約書を結ばずに作業を優先してやってしまうというケースもあり、「何とか開幕に間に合わせたい」というところから、契約書よりも作業を優先してしまう。これが結果的に今の未払いのトラブルに繋がっていくことになります。
小川キャスター:
ギリギリの状況だったということですね。
清水貴太記者:
特に開幕に間に合うのかどうか、本当に微妙なラインだったことが、こうしたトラブルに今つながってしまっていると思います。
小川キャスター:
本当に成功裏に閉幕し、華々しく終わった万博でしたが、現場ではまだトラブルが起きている。この状況について、いかがですか?

東京大学准教授 斎藤幸平さん:
皆が「成功して終わってよかったね」としか思っておらず、このような問題があることをすっかり忘れていると思います。
こういう大変な状況で大手ゼネコンが引き受けられないような中で、無理して引き受けてくださり、何とか成功させてここまできて黒字も出したのに、この仕打ちというのは許せないですよね。
間に入った「GLイベンツジャパン」という会社が、ニュースによればこれからもアジア競技大会などにも関わるようで、また別のところでも同じことが起きるかも知れないということになれば、日本の色々なイベント開催とかにも支障が出ます。これはやはり国がもっと責任を追及しないのかと憤ってしまいます。
藤森キャスター:
そもそも、想定がついたことではないのかという気もします。
清水貴太記者:
やはり国や博覧会協会も、その旗を振った責任はあると思います。法律的には確かに民間同士のトラブルかもしれませんが、やはり政府や博覧会協会は「開幕に間に合わせます」ということを、遅れが指摘されていた2023年頃しきりに言っていたわけです。そういうふうに旗を振った責任があるとは思います。
だから今こそ、この未払いの被害を訴える中小の事業者を救う手立てを考える必要があると思います。