未払い置き去り…“万博倒産”の危機

一方で、置き去りになっているのが「建設費の未払い問題」です。

マルタ館を建設 Aさん
「たった1年でこんな状況になってしまうのは、本当に悔しくて残念でしかたないです」

京都府内で建設業を営むAさん。会社が経営危機に陥っています。

Aさんはマルタ共和国のパビリオン工事を、外資系の元請け業者「GLイベンツジャパン」から請け負った1次下請け業者です。         

参加国が独自に建てるパビリオンの中で、最後に着工したマルタ館。

Aさんは、昼夜を問わず作業を続け、予定された工期より遅れましたが、開幕には間に合いました。

しかし、元請け業者は「工期の遅れなどによるペナルティが発生し、支払える金額は残らない」などと主張。

2025年6月、Aさんは元請け業者に対し、約1億2000万円の支払いを求めて東京地裁に訴えを起こしました。

提訴して以降、従業員が徐々に辞めていき、これまでと同じ規模で工事を受注することも難しくなっています。

マルタ館 1次下請け Aさん
我々にとってはこれは本当に災害と同じ。大きな事故に巻き込まれた。最低限、今を乗り越えるための力を貸していただきたい」

そもそも、大阪府などはパビリオンの建設を進めるため、地元の中小企業への呼びかけを行ってきました。

ただ、今回の件については、「民間同士のトラブル」だとして、立て替え払いや資金繰りの支援はできないとしています。

一方、元請け業者はJNNの取材に対し、「係争中につき詳細は差し控えさせていただきます」としています。

こうした未払いのトラブルは、マルタのほかアメリカ、ドイツ、セルビアなどあわせて11の海外パビリオンで起きています。

未払いを訴える会社は30社以上で、Aさんのように元請け業者を提訴したケースだけでも、支払いを求めている金額は、あわせて5億円以上にのぼります。

11月4日、当事者でつくる被害者の会は、東京の外国特派員協会で会見を行いました。

マルタ館 2次下請け 高関千尋さん
「日本で起こっている問題・トラブルを確実に(海外企業の)本社でも理解させるためには、海外のメディアの協力が必要」

アメリカ館 3次下請け 岸田宗士郎さん
「きれいごとを言っている場合ではない。今回の件で日本政府が本当に信用できないと思いました」

外国メディアの記者も、この問題について関心をもっていると話します。         

パンオリエントニュース カルドン・アズハリさん
「実はすでにこの問題について記事を書いていますし、4日の会見の様子についても別の記事を書こうと思います」

「いのち輝く未来社会のデザイン」。そう掲げた大阪・関西万博。その舞台を支えた建設業者が“万博倒産”の危機に立たされています。