(ブルームバーグ):高市早苗政権の経済政策の司令塔となる「日本成長戦略本部」にリフレ派の有識者2人が選ばれた。大規模緩和の旗を振った安倍晋三政権を踏襲する人選に早くも来年の日本銀行の審議委員人事への影響を指摘する声が上がっている。
高市首相が4日、立ち上げた同本部の有識者12人のうち新たに起用されたのがクレディ・アグリコル証券の会田卓司チーフエコノミストと日銀審議委員を務めたPwCコンサルティングの片岡剛士チーフエコノミスト。いずれも財政拡大と金融緩和維持を重視するリフレ派だ。
日銀の早期利上げをけん制していた高市首相の就任で、日銀は難しい金融政策運営のかじ取りが求められている。政権のリフレ色の強まりは国会同意人事で金融政策決定に投票権を持つ政策委員の人選にも波及し、じわじわと影響力が水面下で強まる可能性がある。
同本部を取り仕切る城内実経済財政相も安倍元首相の経済ブレーンだった本田悦朗元内閣官房参与とも近い。顧問を務めた自民党の「責任ある積極財政を推進する議員連盟」で本田氏を講師として迎えたほか、地元後援会の勉強会などにも呼んでいる。
マーケットコンシェルジュの上野泰也代表は同本部の人選から、「来年前半に任期が満了する日銀審議委員2名の後任人事についても、リフレ派あるいはそれに近い主張の持ち主が選ばれる可能性が高そうだ」と予想。日銀内で低下していた「リフレ派」の存在感が徐々に増していくシナリオが浮上していると指摘する。
来年3月には野口旭氏、6月には中川順子氏がそれぞれ審議委員の任期を迎える。
会田氏は5日付リポートで、政府の経済政策の基本方針は「高圧経済」だとし、日銀に対し「強い経済成長の実現と物価安定を両立させるため、適切な金融政策を行うこと」を期待すると明記。高市政権は、日銀法第4条にある政府と日銀の連携を重要視していると主張する。
黒田東彦前日銀総裁下で審議委員を務めた片岡氏は緩和強化を主張し、量的緩和政策を維持する決定に反対票を投じてきた。高市政権が発足した先月21日付のリポートで、政治・経済のターニングポイントになると評価。「日本にまん延したデフレマインドの完全払しょく」を掲げ、企業の成長期待を高める必要があると指摘した。
高市首相は「危機管理投資」を成長戦略の柱と位置づけ、人工知能(AI)や半導体など17の戦略分野ごとに担当相を指名し、複数年度の予算措置を伴う供給力強化策の策定を指示した。来夏には投資内容やその時期、目標額などを含めた官民投資ロードマップなどを盛り込んだ成長戦略をとりまとめる。
日銀は先月の金融政策決定会合で利上げを見送った。植田和男総裁は会見で、次の12月会合で「適切な政策判断をする」などと発言。円安の進行もあり、市場の早期利上げ観測は維持されている。
本田氏は先月6日のインタビューで、高市首相は日銀の利上げについて慎重に進めてほしいと考えており、「いつならいいとか、今はだめだとか言うことはない」と発言。就任直後の10月会合は難しいとする一方、12月会合の可能性はあるとの見解を示していた。
(詳細を追加しました。更新前の記事は日付と日銀審議委員の名前を訂正済みです)
--取材協力:伊藤純夫、照喜納明美.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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