(ブルームバーグ):森トラストの伊達美和子社長は、東京都心部で新たに参入を計画している客室分譲型のホテルについて、外資系のホテル運営会社と協業する方針を明らかにした。
ブルームバーグのインタビューで答えた。客室分譲型ホテルは「ホテルコンドミニアム」と呼ばれ、購入者が使わない期間はホテルの運営会社を通じて一般の宿泊客に貸し出す。同社は2023年11月、新中長期ビジョンを発表し、30年度までに1兆2000億円を投資する方針を打ち出した。都心部でのホテルコンドミニアム建設はその一環で、具体的な場所や規模などの詳細を詰めている。
伊達氏は「外資系ホテルのオペレーターと組んでいく。都心部だけでなく、地方にも展開を考えている」と述べた。具体的な協業先については言及を避けた。森トラストは21年、米ヒルトングループと協業して沖縄県でホテルコンドミニアムを開業している。
観光立国を推進する政府は30年までに年間6000万人の訪日外国人客(インバウンド)を目指す。日本政府観光局(JNTO)によると、すでに今年1月から9月までの累計でインバウンドは過去最速で3000万人を突破した。外資系ホテルとの豊富な協業実績を持つ森トラストは、活況なインバウンドのホテルやリゾート需要をさらに取り込む狙いだ。
一方、不動産業界を巡っては建築費の高騰が大きな課題だ。日本建設業連合会によると、9月時点の建設資材の平均価格は21年1月に比べて37%増加したほか、労務費などを含めた全建設コストは25-29%上昇。中野サンプラザの再開発プロジェクトが白紙撤回されたり、JR北海道による札幌駅前再計画が大幅に遅れたりするなど影響が相次いでいる。
伊達氏はこうした状況下においても「商品力を上げたりコスト削減を図ったりして実行できるプロジェクトが見えてきた」と述べた。
具体策として、ホテルでは温泉付き客室を設けたり、オフィスの場合は内階段を設置したりするなど、顧客のニーズに合わせた商品開発を挙げた。また、建物の素材や設計の変更を行ってコスト削減にも努める。ホテルや分譲マンションは価格転嫁しやすく、上昇する建築コストを吸収できるとみている。
森トラストは、東京都心部でのホテルコンドミニアム以外に中長期ビジョンで掲げた新規プロジェクトとして東京都港区三田の再開発や長野県軽井沢町のホテルなど16件を抱える。
昨今のマンション価格高騰を受け、東京・千代田区は不動産協会に対して投機目的のマンション取引を防止するよう求めた。伊達氏は「行き過ぎた規制によって冷や水を浴びせるのではなく、バランスを取った制度の活用をしていく必要がある」との認識を示した。
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