(ブルームバーグ):英国から他国に移住する富裕層に特別税を課し、高級住宅に対する税金を引き上げることを同国のリーブス財務相は検討している。今月下旬の予算発表を前に、このほかさまざまな財政再建案が挙がっているという。
事情に詳しい関係者によると、財務省当局者は最大350億ポンド(約7兆1000億円)に上る財政不足を補うため、数十に上る増税案をまとめた。ただ、リーブス氏が最終的に採用するのはその一部だけになる見込みだ。
リーブス氏はどの増税案を採用するかまだ決めていないという。予算責任局(OBR)による最終的な財政見通しが提出され、財政不足がいくらになるのか明確になってから決断する見通しだと、関係者は説明した。
ブルームバーグが1日報道したところによると、リーブス氏は投資家や労働党議員らの予想を上回る大胆かつ進歩的な税制変更を検討している。生産性予想の下方修正で公的財政に200億ポンドの追加的打撃が発生するとしたOBRの指摘を逆手に取り、より公正で簡素な税制を実現させたい考えだという。
そのため、検討されている増税案の多くは富裕層に対象を絞ったものだと、関係者は指摘。英タイムズ紙は週末に、租税回避地に逃れようとする富裕な英国人に「清算税」を導入する案にリーブス氏は乗り気だと伝えた。
同紙によると、国外移住後に英国資産を売却すれば現在の法制度ならキャピタルゲイン税がかからないが、リーブス氏は移住目的の出国時点で資産に20%の税を課す案を検討している。これにより約20億ポンドの歳入を見込んでいるという。
主要国の多くではすでに同様の制度が導入されているが、英国でこうした税制が導入される可能性に専門家の一部は懐疑的な見方を示す。タックス・ポリシー・アソシエーツのダン・ニードル氏はX(旧ツイッター)で、報道を見た人々が施行前に急いで国外に出て行ってしまうリスクがあると指摘した。
リーブス氏は既に、資産流出を招いたとして批判されている。昨年秋の最初の予算でノンドム(英国非永住者)向け税優遇措置を廃止したため、多くの著名投資家や企業家が英国を出国した。
さらに複数のメディアは、リーブス氏が高額不動産に対する課税を強化するため、地方税「カウンシル・タックス」の改革を検討していると報道。過去に労働党議員の間で人気があった「マンション税」構想の実質的な復活が示唆されているという。
原題:Reeves Targets UK Rich With Exit, Mansion Taxes Considered (1)(抜粋)
--取材協力:Julian Harris.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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