(ブルームバーグ):アルファベット傘下のグーグルの共同創業者、セルゲイ・ブリン氏の名前は、マップライト・セラピューティクスの新規株式公開(IPO)関連書類に登場しない。だが、同氏が力を注ぐ慈善活動にとって、このバイオテクノロジー企業の上場は大きな追い風となる。
提出書類によれば、ブリン氏が設立した非営利団体のカタリスト4はマップライト議決権を60.7%保有するが、IPO後に36.8%となる見込み。同氏のファミリーオフィスから2人が取締役に名を連ねる。
ニューヨーク株式市場での取引初日、同社の株価は7.9%上昇の18.34ドルとなり、カタリスト4の保有株は評価額が2億6100万ドル(約400億円)超になった。
カタリスト4は、ブリン氏が5月に5億ドル超のアルファベット株を寄付したことで資産が急増した。ブルームバーグ・ビリオネア指数によれば、ブリン氏(52)の資産は2190億ドルで世界6位の大富豪だ。同氏はマップライトが注力するような中枢神経系疾患の研究に多額の資金を投じている。
カリフォルニア州に拠点を置くマップライトは、統合失調症やアルツハイマー病に伴う精神病の治療薬の臨床試験段階にある。また、自閉スペクトラム症やパーキンソン病など、他の中枢神経系疾患の治療薬開発も進めている。製薬大手の仏サノフィやデンマークの投資会社ノボ・ホールディングスも出資する。
マップライトのIPO書類にブリン氏や同氏のファミリーオフィス、ベイショア・グローバル・マネージメントの名前はないが、関係は何年も前から続く。マップライトの取締役であるジョージ・パヴロフ氏は2015年からベイショアの最高経営責任者(CEO)を務め、投資と慈善活動を統括する。マップライト共同創業者のロバート・マレンカ氏は、過去2年間ベイショアで最高科学責任者(CSO)を務め、今月スタンフォード大学に復帰した。同氏は11月から上級科学顧問としてベイショアの投資や慈善活動を引き続き支援するとメールで明らかにした。
マップライトとベイショアはブルームバーグのコメント要請に応じなかった。
書類によれば、ベイショアは23年5月、別会社で保有していたマップライト株をカタリスト4へ移管した。その後、カタリスト4は追加の資金調達ラウンドに参加し、マップライトへの保有比率を高めた。
ブリン氏は21年にカタリスト4を設立し、気候変動対策および中枢神経系疾患の研究に資金を投じている。ブリン氏は、パーキンソン病の発症リスクが高まるとされる遺伝子変異を保有していることを公表している。
カタリスト4は寄付とスタートアップやベンチャーキャピタルファンドへの投資の両方を行う。マサチューセッツ州ボストンを拠点とするバイオテクノロジーのスタートアップ、ステラロミクスの株式を70%超保有していることが提出書類には記載される。パヴロフ氏は同社の取締役も兼任する。
マップライト株には投資家からの申し込みが殺到し、23年末時点で10億ドルを超えていたカタリスト4の資産はさらに拡大する可能性がある。ブリン氏が5月に寄付した株式の大半はカタリスト4に贈られたが、同氏のファミリー財団やパーキンソン病研究を支援するマイケル・J・フォックス財団にも分配された。
カタリスト4の幹部らは昨年、新会社ブリッジ・アナリティクスを立ち上げた。ウェブサイトによれば、中枢神経系の臨床試験に関する研究を分析するための最先端データエコシステムの構築を目指し、かつてグーグルのライフサイエンス部門にいた神経科学者、リトゥ・カプール氏が率いる。ブルームバーグのコメント要請にカプール氏は返答していない。
原題:Sergey Brin Nonprofit Gets $261 Million Lift in MapLight IPO (2)(抜粋)
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