ニューヨークのマフィアは長年、競合するヘッジファンドのように自らの市場シェアをそれぞれ守ってきた。だが今では、資金と技術、マンパワーを持ち寄って利益を分け合う姿に変わりつつある。

そうしたマフィアの協力関係は、ブルックリンの検察当局が先週発表した大規模スポーツ賭博組織の起訴で明らかになった。

当局者によると、ニューヨークの5大ファミリーのうち、ジェノヴェーゼ、ガンビーノ、ボナンノ、ルッケーゼの4組織が前例のない形で手を組み、高額ポーカーを不正操作し、富裕層の賭博客から数百万ドルをだまし取っていたという。

ニューヨーク市警(NYPD)のティッシュ本部長は記者会見で、「5大ファミリーのうち4組織を一度にまとめて訴追するのは極めて異例だ。それだけ巨額の資金が動いていたということだ」と述べた。

ニューヨーク市警のティッシュ本部長

この事件により、かつては地区ごとに縄張りを分けていたマフィアが、今や利益とテクノロジーを共有して活動している状況が浮き彫りになった。改造されたカードシャッフラーやエックス線テーブルが、ナイフや拳銃に取って代わったが、暴力で脅して強要する構図は昔のままだ。

ティッシュ氏は「彼らは脅迫と威嚇、暴力を使う。何十年も変わらない手口だ」と話した。

検察当局によると、仕組まれたゲームで賭博客が失った金額は総額700万ドル(約10億6400万円)超に上り、その中には190万ドル近くを失った者もいた。

各ファミリーが分け前を得ていた。ボナンノ一家はレキシントン街で、ガンビーノ一家はワシントンプレイスでそれぞれカジノを運営。ジェノヴェーゼとルッケーゼ両一家は回収を担当していたという。

1台1万ドルのカードシャッフラーにはカードを読み取る隠しセンサーが仕込まれ、カードの順序を外部の「ドライバー」に送信。ドライバーはテーブルにいる「クオーターバック」に勝ち手札をテキストで伝えた。手首への軽いタッチやチップの山をなでるしぐさが、勝者を示す合図だった。

NYPDの元刑事部長で35年間勤務したロバート・ボイス氏は「犯罪組織はなお存在しており、国内外で脅威であり続けている」と指摘。今回の賭博事件は「法執行機関が連邦・地方レベルで警戒を怠らず、協調して犯罪組織と闘っている証拠だ」と述べた。

原題:NYC’s Mafia Clans Profit From the Once Unthinkable: Teaming Up(抜粋)

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