(ブルームバーグ):米中の通商交渉担当者は、今週開かれるトランプ大統領と習近平国家主席の首脳会談での合意発表に向け、一連の外交的成果を示した。こうした容易な成果は投資家を安心させているが、より深層にある根本的な対立は依然として未解決のままだ。
トランプ大統領は27日、「中国との合意について本当によい感触を持っている」と記者団に述べた。週末にマレーシアで開かれた閣僚級協議では、通商摩擦の緩和を目指す多数の合意が示された。今回の合意では、中国が米共和党の支持基盤となる州で大豆の購入を再開し、米国は最近新たに警告した100%関税措置を見送る方針だ。その見返りとして、米国は中国からレアアース(希土類)の供給を確保することになる。
金融市場はこの報道を好感し、MSCIの世界株指数は過去最高値を試す展開となった。
しかしアナリストらは、トランプ氏と習氏が韓国で署名する見通しとなった今回の合意について、難題を避けていると警告している。安全保障を巡る根本的な対立は手つかずのままで、トランプ氏が掲げる貿易不均衡の是正という核心的な目標も達成には程遠いという。さらに、中国の対米投資は依然として厳しく制限されており、問題の解決を一層困難にしている。
清華大学の孫成昊研究員は、「取りやすい果実を先に摘めば、先行きの道筋はより険しいものになる。困難かつリスクの高い対立が最後に残されるからだ」と指摘する。今後数年にわたり、継続的な対話を通じて分野ごとの小規模な合意が積み重ねられていく可能性が高いと話した。
ベッセント米財務長官は、これまでの通商協議で中国に対し、経済の再均衡と国内消費の拡大を促してきた。しかし中国政府は先週、それらの要請を事実上無視し、少なくとも2030年まで製造業と科学技術での自立を経済の原動力とする方針を打ち出した。
一方、トランプ大統領はアジア歴訪を開始し、タイやマレーシアとレアアース関連を含む通商協定を締結したほか、カンボジアとは反ダンピング対策での協力を確認した。いずれも中国との摩擦分野だ。これらの動きは、政権復帰後初となる習主席との会談を前に、トランプ氏が中国に対する交渉力を高める狙いがあるとみられる。
トランプ氏が1930年代以来の高関税政策を導入し、中国を主要な標的に定めて以来、米中関係は報復合戦による緊張の高まりと、緩和を目指す経済協議との間を揺れ動いてきた。
中国共産党の機関紙は27日、米中通商協議で「苦労して得た成果を共同で守る」よう呼びかけた。
同紙は論評で、米国に対し、ベッセント氏と中国の何立峰副首相が率いる協議メカニズムを維持するよう求めた。米政府がこの枠組み外で発表した輸出規制は、これまで何度も両国関係を不安定化させ、そのたびに中国は米製造業に不可欠なレアアースの供給を制限して対抗してきた。
アジア・グループのパートナーで、元米国務次官補(東アジア・太平洋担当)のダニエル・クリテンブリンク氏は「双方ともに今は安定を重視しているようだ」とブルームバーグテレビジョンで発言。「しかし、この関係の根本的な構図は何も変わっていない」と語った。
米シンクタンク、大西洋評議会傘下グローバル・チャイナ・ハブのデクスター・ロバーツ上席客員フェローは、「中国がレアアース資源での影響力を手放すことは決してない」と指摘。「それは彼らにとってあまりにも愚かな行為になるだろう」と続けた。
原題:Latest US-China Trade Truce Leaves Fundamental Issues Unresolved(抜粋)
--取材協力:Philip Heijmans、Allen K Wan、David Ingles、Yvonne Man.
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