内定・内々定の辞退者がいる企業は7割以上
毎年10月には多くの企業で内定式が実施される。
内定式では、社長の挨拶や会社説明、内定者同士の交流会などが企画され、入社までのスケジュールの把握や認識共有などを目的に、各社で様々な取組みが行われている。
内定式の時期を迎えた企業にとっての懸念材料は「内定者の辞退」である。
内定式から入社までは半年ほどあり、何らかの事情で内定辞退を選択する場合もある。内定者に辞退されれば、企業側は採用のコストを含めて損害を被りかねない。
実際、東京商工会議所が2025年に実施した調査によると、「内定・内々定の辞退者がいる」と回答した企業は、「内定・内々定者の半数以上の辞退者がいる」と「内定・内々定者の半数未満の辞退者がいる」を合わせて73.1%にのぼった。
内定辞退の理由は多様だが、いわゆる「超・売り手市場」もその背景の一つといえる。
2025年3月に卒業した大学生の就職率は98.0%に達し、好調を維持している。新入社員の初任給を30万円台に引き上げる企業が続出したことが話題になったように、人材獲得競争が激化するなかで、「内定を辞退しても他の企業に行けるのでは」と考える内定者も一定数いるようだ。
企業側も内定辞退の防止に向けた対策に取り組んでいる。
採用担当者からの定期的な連絡や懇談会の実施などが挙げられるが、近年注目されているのが「内定者の親」に対して内定や入社に関する確認を行う、いわゆる「オヤカク」である。
東京商工会議所による前述の調査でも、2025年新卒者の採用・選考活動において、企業は親など内定者・内々定者の親族等に対して、「自社へ入社することの意向確認や同意書の取り付け」や「自社の代表者等のメッセージの送付」など、様々な「オヤカク」を行っていることがわかる。
Z世代の4割以上が「就活について親に相談したことがある」
現在、新規学卒者で就職活動の時期を迎えている世代は、いわゆる「Z世代」にあたる。
Z世代は、定義が厳密に定められているわけではないが、おおむね「1990年代半ばから2000年代に誕生した世代」を指しており、2025年現在では10代後半から20代後半にあたる。
生まれながらにしてインターネットが利用可能だったことから「デジタル・ネイティブ」といわれ、多様性を重んじる傾向などが指摘されている。
このZ世代が就職活動を行う際には親の影響があるようだ。
第一生命経済研究所が2025年3月に全国の18~69歳の1万人に対して実施した調査によると、「就職活動の際、親に相談したり、エントリーシートなどを親に見てもらったことがある」と回答したZ世代(18~27歳)は、「あてはまる」と「どちらかといえばあてはまる」を合わせて42.1%にのぼった。
一方、Z世代の親にあたる団塊ジュニア世代(50〜53歳)では、「あてはまる」と「どちらかといえばあてはまる」の合計が24.8%となっている。
このように、Z世代が就職活動を行う際には、親の影響が一定程度あることがわかった。
こうした背景から、前述のように、Z世代が就職活動を行う企業の採用担当者が内定者の親に内定の確認や入社に向けた説明を行う「オヤカク」を通じて、親による内定辞退を防ぐ効果が期待されている。
就職活動における「オヤカク」については、企業だけではなく政府も紹介している。
2025年3月、内閣官房・文部科学省・厚生労働省・経済産業省が連名で、経済団体などに向けて2026年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する文書を発出した。
そのなかで、「いわゆる『オヤカク』と称されるものについては、例えば、企業が保護者にも企業情報を提供するなど、入社に際しての保護者の不安を解消し、企業に対する理解を深めることを目的とするケースがある」と記載された。


