「資産形成も結婚も親から助言」というZ世代の特性
このように「オヤカク」は就職活動に関する用語であるが、親の影響はZ世代の就職活動に限らず、他にもライフデザインにおける様々な場面に及んでいる。
第一生命経済研究所による前述の調査では、「お金の稼ぎ方や資産形成などについて、親から助言を受けたことがある」については、「あてはまる」と「どちらかといえばあてはまる」を合わせてZ世代は42.5%で、その親にあたる団塊ジュニア世代と比較すると約17ポイント高い。
また、「結婚の年齢や時期、相手などについて、親から助言を受けたことがある」についても、同じく「あてはまる」と「どちらかといえばあてはまる」を合わせてZ世代は38.3%で、団塊ジュニア世代に比べて約12ポイント高くなっている。
同じZ世代でも、就職活動と資産形成で「親から助言を受けたことがある」とする割合は、Z世代前期(23〜27歳)よりもZ世代後期(18〜22歳)の方が高い傾向にある。
さらに次の世代(α世代)では、親の影響がより強くなることが予想される。
「オヤカクが普通」の世代へのライフデザイン支援
Z世代が自身の就職活動や資産形成、結婚などのライフデザインを考える際に親の影響が強まっている背景にはいくつかの理由が考えられる。
第一に、不確実性と情報過多である。
業界や働き方の変化が速く、終身雇用や年功序列などの前提が変わった結果、「何が正解なのか」が分かりにくくなった。
SNSや就職活動サイトなどで情報過多となったことも含め、結果として経験が豊かな親が相談を受けやすくなっている。
第二に、家計と生活コストの上昇だ。
学費や家賃、物価が上がる一方で手取りは伸びにくく、若者だけで費用を負担するのが難しい。
緊急時の資金や子どもの教育などで親の支援が必要となることを通じて、親の子どもに対する意思決定への関与が強まるとみられる。
第三に、ライフコースの多様化である。
転職・副業・共働きなど人生の選択肢が増えれば増えるほど、自分が目指したいライフデザインが難しくなり、親に助言を求める機会も増える。
さらに、コロナ禍以降の社会の不安定さが、子どもにとっての「身近なセーフティーネット」としての親の存在感を押し上げたのではないか。
加えて、前述のように、企業も内定辞退や早期離職を防ぐために「オヤカク」を行うなど、親の存在を意識した動きがある。
このような状況が複合的に絡み合った結果として、親は物理的・精神的を問わず「子どものメンター」としての存在感を増し、Z世代のライフデザインにおける意思決定に影響を及ぼす構図ができつつあるのではないか。
こうした背景をふまえ、Z世代のライフデザイン支援としては、親の影響力を考慮しつつ、本人の意思決定を中心に据えていくという視点が大切だ。
まず、Z世代が自身のライフデザインについて考え、決定していくための土台を整えることが重要である。
そのためにも、職業選択や資産形成、家族形成などのライフデザイン全般について「自分ごと」として学び、将来において適宜判断できるリテラシーを身に付ける機会を学校や地域などでより充実させることが必要だろう。
この視点は、民間企業が実施している施策にも欠かせない。
たとえば、「オヤカク」は親に対する説明を働き方や福利厚生などの情報提供にとどめ、Z世代の内定者自身が最終決定を行うことができるサポートが必要だ。
同年代の先輩社員が「内定者のメンター」になるなど、Z世代が抱く様々な不安に寄り添いつつも、自立的に解消していくための工夫が各社で求められる。
以上のような取組みを通じて、様々な場面における親の影響を適切な力に変えつつ、Z世代が自立したライフデザインを構築できるように多面的な支援を行うことが、「オヤカク世代」を考えるうえで重要な視点である。
(※情報提供、記事執筆:第一生命経済研究所 ライフデザイン研究部 主任研究員 西野偉彦)
※なお、記事内の「図表」「注釈」に関わる文面は、掲載の都合上あらかじめ削除させていただいております。ご了承ください。

