はじめに
ニッセイ基礎研究所の独自調査データを用いて、2019年から2025年にかけての男女・年齢層別の平均片道通勤時間の全国的な変化を分析した結果、男性では通勤時間に大きな変化がみられなかった一方で、女性では年齢層を問わず通勤時間が増加した傾向が明らかになった。
一方で、通勤行動は居住地域の都市構造や交通環境、住宅事情などの影響を強く受けると考えられ、全国平均でみられた変化の背景や特徴は地域によって異なる可能性がある。
特に、通勤時間が相対的に長い東京圏とその他の地域では、コロナ禍前後の通勤行動の調整のあり方に違いが生じている可能性がある。
そこで本稿では、ニッセイ基礎研究所が日本在住の被用者(公務員または会社に雇用されている人)を対象に、2019年から2025年まで毎年実施してきたオンライン調査による独自データを用いて、2019年から2025年にかけての男女・年齢層別の平均片道通勤時間の変化を、東京圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)とその他の地域(左記の4都県以外の道府県)に分けて分析し、その特徴を明らかにする。
勤時間変化の男女・年齢層別の地域差
まず、2019年から2025年の通勤時間の変化について、東京圏とその他の地域の差を、男女・年齢層別に見ると、2019年から2025年の通勤時間の平均値の変化のみられる地域差は、男女や年齢層によって異なる可能性が示唆される。
特に20代以下と50代以上の女性については、東京圏とその他の地域の変化の大きさに3分以上の差がみられ、地域差が大きい可能性が示唆される。
男女・年齢層別平均通勤時間の変化
次に、東京圏とその他の地域について、それぞれの2019年から2025年の通勤時間の変化をそれぞれの地域の2019年から2025年にかけての片道通勤時間の推定変化から見ると、両地域に共通して、男性の推定変化の曲線はゼロ付近にあり、通勤時間の変化は年齢層にかかわらずほとんど確認されない。
一方、女性については両地域とも、推定変化の曲線はゼロを上回っており、通勤時間が年齢層を問わず増加した傾向がうかがえる。
地域による違いとしては、東京圏の女性では30代と40代の通勤時間の増加幅が小さい一方、20代以下および50代以上では増加幅が大きい傾向がみられる。
一方で、その他の地域の女性では年齢層による増加幅の違いは明確にはみられない。
つまり、東京圏とその他の地域の違いは、東京圏での20代以下および50代以上の女性の通勤時間の増加を反映したものであると考えられる。
同様の傾向は、東京圏とその他の地域についてそれぞれ、2019年と2025年の男女・年齢層別の片道通勤時間の推定曲線からも確認できる。
男女別平均通勤時間の年次変化
次に、通勤時間の変化の時期の地域差を確認するために、東京圏とその他の地域それぞれにおける男女別の片道通勤時間の2019年との推定差分の年次推移から考える。
両地域に共通して男性の推定片道通勤時間は2019年から2025年まで大きな変化はみられない一方、女性では2025年には2019年と比べて統計的に有意に長くなっていることが確認される。
地域による違いとしては、東京圏の女性の通勤時間の増加は2024年以降にみられるのに対して、その他の地域の女性では2020年から2025年にかけて徐々に片道通勤時間が増加しており、増加のタイミングが異なる可能性が示唆される。
おわりに
本稿では、2019年から2025年にかけての男女・年齢層別の平均片道通勤時間の変化を、東京圏とその他の地域に分けて分析した。
その結果、いずれの地域においても、男性では通勤時間に大きな変化がみられなかった一方、女性では通勤時間が増加する傾向が確認された。
ただし、その時期や上昇の現れ方には地域差がみられ、東京圏では2024年以降に上昇が顕在化する一方、その他の地域では2020年以降、比較的早い段階から通勤時間の増加が進んでいた。
また、東京圏では20代以下および50代以上の女性で通勤時間の伸びが顕著だったのに対し、その他の地域の女性では年齢層による増加傾向に明確な違いはみられなかった。
これらの結果は、コロナ禍前後の通勤行動の変化が、地域の特性に応じて異なる形で現れてきた可能性を示唆している。
こうした地域差の背景としては、都市部における産業・職種構成や働き方の多様性、居住と就業の地理的関係の違いなどが影響している可能性がある。
もっとも、本稿ではこれらの要因を直接検証しているわけではないため、今後は転職行動やテレワーク活用状況、居住地の変化などを含めた詳細な分析が必要である。
(※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 保険研究部 准主任研究員 岩﨑 敬子)
※なお、記事内の「図表」と「注釈」に関わる文面は、掲載の都合上あらかじめ削除させていただいております。ご了承ください。






