日本は経済成長に向けたさらなる債務拡大を避けるべきだと、国際通貨基金(IMF)アジア太平洋局のナダ・シュエイリ副局長が警告した。政治的混乱を背景に歳出拡大への懸念が高まり、長期国債利回りに上昇圧力がかかっている。

米国の首都ワシントンで開催中の年次総会に合わせて15日に行われたインタビューで、「政府が経済の一部を支援したいと考えるのは理解できるが、例えば(消費税に相当する)付加価値税(VAT)の引き下げは的を絞った措置ではない」と述べた。その上で政策対応は「一時的かつ的を絞ったもの」であるべきだとし、すでに予算に計上された資金を活用し、赤字を拡大させないことが重要だと指摘した。

日本の30年国債利回りは現在3.2%前後で推移しており、年初からほぼ1ポイント上昇した。政治的混乱を受けて追加的な財政出動への警戒感が強まっている。

26年続いた自公連立政権が崩壊したことで、首相に選出されることを目指す高市早苗自民党総裁は難しいかじ取りを迫られている。誰が政権を担うにせよ、相当規模の補正予算が編成される見通しで、一部の野党は多額の費用を伴う消費税の減税を主張している。

IMFによると、日本の公的債務の国内総生産(GDP)比は先進国の中で最大で、今年は230%に達する見込みだ。

シュエイリ氏は、市場が動揺する一方、政治的混乱は現時点で日本経済に大きな影響を与えていないと言及。賃金上昇や企業の景況感、企業収益が景気の底堅さを支えており、日本銀行による現行の緩和的な政策スタンスを支持するとした。

日銀は今年1月に政策金利を0.5%に引き上げた後は据え置いている。IMFは2026年1-3月(第1四半期)に平均0.6%、28年までに1.5%に達すると予想している。

IMFが今週発表した最新の世界経済見通し(WEO)によると、日本の25年の成長率見通しは1.1%と従来の0.7%から上方修正された。26年の見通しも0.6%へと小幅に引き上げられた。シュエイリ氏は、こうした上方修正は個人消費と設備投資の堅調さ、日米間の貿易合意による不確実性の低下を反映したものだと説明した。

日米は7月末、日本から米国への輸出の多くに対し15%の関税を適用することで合意した。IMFはこの関税により日本の成長率が25年に0.3ポイント、26年に0.2ポイント押し下げられるとみている。ただし、これまでの成長率見通しには大幅な関税が課される可能性を織り込んでいた。

IMFの報告書によると、日本の輸出業者、特に自動車メーカーはこれまでのところ関税負担の多くを自社で吸収し、米国の消費者への価格転嫁を抑えてきた。日本から北米に輸出される乗用車の価格は20%余り下落している。

シュエイリ氏は、IMFの試算では「来年末までに関税のコストが米国の消費者に完全に転嫁される」と述べた。

原題:IMF Says Japan Should Avoid Adding Debt as Budget Pressure Grows(抜粋)

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