(ブルームバーグ):欧州の自動車メーカーは最大で8つの工場閉鎖に追い込まれる可能性があると、コンサルティング会社のアリックスパートナーズが予想した。自動車需要の低迷と、中国の比亜迪(BYD)など新たな競合相手の出現が欧州自動車メーカーに苦渋の決断を強いることになるかもしれないという。
アリックスパートナーズによると、欧州の自動車工場は稼働率が75%を下回ると赤字になり収益を圧迫するが、現状は平均で55%にとどまっている。特に厳しいのはステランティスで、稼働率は約45%に過ぎないという。
ドイツを拠点とするアリックスパートナーズのマネジングディレクター、ファビアン・ピョンテク氏は「欧州の自動車メーカーは向こう数年で中国車に販売を100万台から200万台奪われるだろう」と指摘。「中国メーカーの欧州における市場シェアは今年中に約5%に達する」との見方も示した。
ステランティスの代表者はコメントを控えた。

工場の閉鎖は膨大なコストのほか、強力な労働組合との長い交渉を伴う。アリックスパートナーズの試算によれば、従業員1万人規模の大規模工場を閉鎖する場合、その手続きに1年から3年を要し、約15億ユーロ(約2650億円)の費用がかかるという。
欧州の自動車需要が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)以前の水準を回復しないため、各社は人員と生産を削減している。フォルクスワーゲン(VW)は今月、1週間にわたってドイツ・ツウィッカウ工場を閉鎖し、ステランティスはフィアット「パンダ」やアルファロメオ「トナーレ」などのモデルを生産する複数の工場の稼働を一時的に停止した。
欧州自動車工業会(ACEA)によると、欧州における昨年の納車台数は前年比0.9%増の約1300万台にとどまった。BYDや上海汽車集団(SAIC)など中国ブランドは2030年までに10%の市場シェアを取る可能性があり、欧州メーカーには生産能力削減の圧力が強まりそうだと、アリックスパートナーズはみている。
アリックスパートナーズによると、自動車工場は全般的に年25万台以上生産すれば利益が出るよう設計されている。中国メーカーの欧州販売台数が年200万台前後に上れば、欧州でおよそ8つの工場が余剰になるという。
原題:Europe’s Half-Empty Car Plants Face Bleak Future on Weak Demand(抜粋)
--取材協力:Albertina Torsoli.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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