(ブルームバーグ):ブリヂストンは米国事業への逆風の強まりを受け、2025年下期の収益環境はさらに悪化すると見込んでいる。トラック用タイヤの需要減速、関税負担の拡大、生産に支障をきたしたサイバー攻撃の余波が響く。
石橋秀一グローバルCEO(最高経営責任者)は6日のインタビューで、米国での新車向けトラックタイヤの需要が8月上旬以降、急速に落ち込んでいると説明。2025年を「緊急危機対策の年」と位置づけ、米国市場の影響を和らげ収益性を高めるため、老朽工場の統合による効率化や「ファイアストン」ブランドの再生を進める考えだ。

北米事業の苦境はトラックメーカー各社が、設備投資の弱さや関税など貿易構造の変化を受けて、生産計画を縮小していることが背景にある。
例年、タイヤ需要は日本や欧州で冬季販売が本格化する年後半にかけて増加する傾向にあるが、今年は米国市場の弱さがその季節的要因を相殺する。同社の利益率維持に向けて正念場を迎えている。
米関税負担とサイバー攻撃
ブリヂストンは8月、米国の関税措置による直接的影響が年間250億円程度、米景気減退などによる間接的影響が100億円程度と試算。石橋氏によれば、関税負担は、前倒し出荷や在庫確保、輸送リードタイムといった従来の緩衝策は効果が薄れてきており、7月以降、本格的に業績に影響を及ぼしている。
さらに8月に北米で発生したサイバー攻撃による生産遅延を海外出荷で埋め合わせたため、関税が上乗せされ追加的コスト負担が発生した。しかし、石橋氏は通期業績計画は維持し、利益目標の達成を目指す考えだ。来年2月の通期決算発表時には次回の自社株買いを公表する可能性もあるという。
米関税措置の影響を打ち返し目標達成を可能にするため「体質を強くする活動をよりアクセラレート(加速)する」と話す。固定費の削減と効率化に向け、テネシー州のトラック・バス向けタイヤ工場など老朽設備の統合を進めるという。
ファイアストンに活路
また、ブリヂストンは米国で長年展開してきた「ファイアストン」ブランドにも活路をみいだしている。石橋氏は同ブランドの再生を「チャンスに変えたい」と語る。第2四半期以降、乗用車やトラック向けのファイアストンタイヤの販売は、新製品の投入を追い風に増加しており、この傾向は来年も続く見込みだという。
安価な中国製タイヤが市場を席巻するブラジル市場については、今期中に黒字化を達成する方針を改めて示した。業績改善が進む欧州では、来期には調整後営業利益率6-7%の達成を目標としているという。
長期的な目標値は変わっていないという石橋氏。ただ、米関税措置など市場環境の変化を踏まえると、30年に営業利益率15%を達成するという目標について「本当にフィージブル(実現可能)かどうかというのはまた別の問題だ」と語った。
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