(ブルームバーグ):6日の日本市場では株式が急騰し、2000円以上上げた日経平均株価など主要株価指数は終値で史上最高値を更新した。4日の自民党総裁選で高市早苗新総裁が誕生し、財政拡張や金融緩和の継続を期待した取引が優勢となり、防衛や原子力発電所関連などいわゆる「高市銘柄」が大きく値を上げた。
債券相場は中期債が上昇した半面、新発30年や40年国債など超長期債は大幅下落(利回りは上昇)。外国為替市場で円は対ドルで8月1日以来、約2カ月ぶりに150円台に急落し、対ユーロでは最安値を更新した。
高市新総裁は安倍晋三元首相の「アベノミクス」路線を継承し、景気刺激を重視する一人。「サナエノミクス」と呼ばれる金融・財政両面で緩和的な同氏の政策姿勢は、株式には支援材料となる。一方、追加利上げには慎重で、日本銀行による10月利上げ観測が後退する可能性がある。スワップ市場が織り込む10月利上げ確率は5割強から2割程度に急低下した。
株式
日本株は急騰し、日経平均は一時初めて4万8000円台を付けた。自民党総裁に予想外の高市氏が選出され、景気刺激策や金融緩和的な政策への期待、為替の円安観測が強まり、幅広い業種に買いが入った。東証33業種は銀行、空運を除く31業種が上昇。プライム市場の売買代金は7兆8899億円と今年2番目の高水準。
電機や機械、精密機器、輸送用機器など輸出セクター中心に上昇。高市新政権による原子力発電所の推進期待を背景に電気・ガス、日銀の利上げが緩やかになるとの観測から不動産も高い。機械では三菱重工業など国防関連の急騰が顕著で、高市新総裁の政策や考えの恩恵を受けそうな「高市銘柄」が活況だった。
富国生命保険の佐藤篤有価証券部長は「日本株は小泉進次郎農林水産相の勝利を事前に織り込みつつあったところが巻き戻り、上昇の勢いが増した」と指摘。高市氏の関連銘柄が買われる「高市トレード」に関しては、「きょうである程度落ち着くのではないか。防衛関連などは既にバリュエーションが高い」と述べた。

債券
債券相場は償還期間の短い中期債が上昇。高市氏の自民党総裁選勝利で日銀の利上げが遅れるとの見方から買われた。一方、20年や30年、40年債など超長期債利回りは大幅上昇(価格は下落)し、利回り曲線(イールドカーブ)は傾斜(スティープ)化した。長期国債先物12月物は取引開始時に売買が30秒間停止するダイナミック・サーキッドブレーカーが発動される場面があった。
SMBC日興証券の田未来シニア金利ストラテジストは「高市氏の選出を受け、市場は利上げ観測が後退する方向に反応した」と分析。10月利上げを見込んでいた投資家によるポジションのアンワインド(解消)が進み、「ロスカットを伴う売買が相場を大きく揺らしている」と述べた。
あす7日には30年国債入札が実施される。三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは「弱い結果を予想している」とし、高市氏勝利で超長期ゾーンは財政悪化や格下げの可能性が意識されていると話した。
新発国債利回り(午後3時時点)
為替
外国為替市場で円は対ドルで一時150円台半ばと8月1日以来の安値へ急落した。対ユーロでは一時176円25銭と1999年のユーロ導入以来の最安値を更新。
三菱UFJ銀行グローバルマーケットリサーチの井野鉄兵チーフアナリストは「高市氏は積極財政と言っており、日銀利上げに否定的な感じなので、円売りを想起しやすい」と指摘。欧州勢が本格的に市場に入ってきて円売りとなると、ドル・円は「150円台で定着する可能性がある」とみている。
みなと銀行の苅谷将吾ストラテジストは、チャート面でも一目均衡表などでドルの上昇サインがしっかり出ており、「8月1日に150円92銭までドルは上昇しているため、この水準を目指していく」と話していた。
この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。
--取材協力:堤健太郎、日高正裕.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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