6日の日本市場では株式が急騰し、2000円以上上げた日経平均株価など主要株価指数は史上最高値を更新した。4日の自民党総裁選で高市早苗新総裁が誕生し、財政拡張や金融緩和継続を期待した取引が優勢となり、防衛や原子力発電所関連などいわゆる「高市銘柄」が大きく値を上げた。

外国為替市場で円は対ドルで149円台後半に急落し、対ユーロでは過去最安値を更新。債券相場は先物や中期債が上昇した一方、新発30年や40年国債など超長期債は大幅下落(利回りは上昇)している。

高市新総裁は安倍晋三元首相の「アベノミクス」路線を継承し、景気刺激を重視する一人。「サナエノミクス」と呼ばれる金融・財政両面で緩和的な同氏の政策姿勢は、株式には支援材料となる。一方、追加利上げには慎重で、日本銀行による10月利上げ観測が後退する可能性がある。スワップ市場が織り込む10月利上げ確率は5割強から2割程度に急低下している。

株式

日本株は急騰し、日経平均は初の4万7000円台を付けた。自民党総裁に予想外の高市氏が選出され、景気刺激策や金融緩和的な政策への期待、為替の円安観測が強まっている。東証33業種中、銀行を除く32業種が高い。

自動車や電機、精密機器、機械など輸出関連、商社や鉱業など景気敏感業種に買いが先行。原子力発電所の推進期待から電気・ガスも値上がりが目立つ。日銀の利上げが緩やかになるとの観測から不動産も高い。

富国生命保険の佐藤篤有価証券部長は「日本株は小泉進次郎農林水産相の勝利を事前に織り込みつつあったところが巻き戻り、上昇の勢いが増した」と指摘。高市氏の関連銘柄が買われる「高市トレード」に関しては、「きょうである程度落ち着くのではないか。防衛関連などは既にバリュエーションが高い」と述べた。

為替

外国為替市場で円は対ドルで149円台後半に下落し、一時149円95銭と8月1日以来の150円が迫っている。対ユーロでは175円85銭と1999年のユーロ導入以来の最安値を更新。みなと銀行の苅谷将吾ストラテジストは、ドル・円について「自民党総裁選は市場の予想外の結果だったので、日本時間では上値が抑えられる可能性もあるが、いずれ150円を付けそうだ」と言う。

三菱UFJ信託銀行資金為替部マーケット営業課の酒井基成課長も「高市氏勝利はサプライズで、織り込み切れていなかった分の円売り圧力が強い」とし、10月の日銀利上げも難しくなったとの見方も円売りに働くと指摘した。

ただ酒井氏は、円は対ドルで2円程度下落している上、「高市氏も昨年のトーンを控えているため、150円を超えてもさらに突き抜けてドルが買われることも想定しにくい」との見方も示した。

債券

債券市場では償還期間の短い中期債が上昇する一方、30年債や40年債など超長期ゾーンが大幅に下落。自民党総裁選で高市氏が勝利したことを受け、市場では同氏の政策スタンスが債券相場に影響し、利回り曲線(イールドカーブ)の傾斜(スティープ)化を促している。

新発30年債利回りは13bp高い3.28%、新発40年債利回りは一時14bp高い3.52%にそれぞれ上昇した。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の鶴田啓介シニア債券ストラテジストは、「日銀の利上げけん制と財政拡張という高市氏の政策を織り込む展開だ」と指摘。SMBC日興証券の田未来シニア金利ストラテジストも「高市氏の選出を受け、市場は利上げ観測が後退する方向に反応した。10月利上げを見込んでいた投資家のポジションのアンワインド(解消)が進み、ロスカットを伴う売買が相場を大きく揺らしている」と述べた。

この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。

--取材協力:堤健太郎、清原真里.

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