(ブルームバーグ):米債券市場で今後数日の最大の焦点は、早ければ10月の追加利下げの観測が月次の雇用統計の発表後にさらに揺らぐかどうかだ。
先週は、一部の経済指標が予想を上回り、米金融当局者の間で金融政策を巡る見解が割れたことから、追加利下げ観測がやや後退した。ただ、金融市場には大きな不確定要素がある。10月1日から米連邦政府機関の一部閉鎖が始まる可能性があり、3日に予定されている雇用統計を含む主要経済指標の発表は遅れる恐れがある。雇用統計は最も注視される経済指標の一つだ。
雇用市場の軟化を受け、米金融当局は今月、今年初の利下げに踏み切った。市場では10月28、29両日開催の連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利下げが行われる確率を約80%と見込んでいる。だが、労働市場の冷え込みを裏付け、追加緩和期待が強まるには弱いデータがさらに必要かもしれない。そうなれば米国債は2020年以来の高い年間リターンを維持できるとみられる。
マールボロ・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ジェームズ・エイシー氏は「ここから相場を押し上げるには雇用統計が不可欠だ。弱い経済と米金融当局のハト派路線という構図の中で最も重要な要素になる」と指摘。その上で「たとえそうしたデータが発表されたとしても、利回りをさらに押し下げるほど弱い数字が出るハードルは高い」とし、米国債の保有比率を低めに抑えていると付け加えた。
10年債利回りは先週、4.2%近くまで上昇した。米金融当局が0.25ポイントの利下げを実施した9月17日には4%を割り込んでいた。利回りが上昇に転じた背景には、新規失業保険申請件数の減少や4-6月(第2四半期)の堅調な経済成長を示すデータがあった。
こうした指標を受け、市場は利下げ期待をやや後退させたが、なお来月と12月の0.25ポイント利下げを強く織り込んでいる。向こう12カ月で合計1ポイント程度の利下げが織り込まれている状況だ。
ブルームバーグ調査の予測中央値によると、10月3日に発表予定の9月の雇用統計では、非農業部門雇用者数は5万人増加と見込まれている。過去3カ月の平均は3万人未満の増加にとどまっていた。先週、パウエルFRB議長は、最近の雇用増加のペースは「失業率を一定に保つために必要な水準を下回っているようだ」と述べた。
議長はまた、労働市場の減速とインフレ加速という相反するリスクに直面していると改めて指摘した。金融当局者の見解も割れている。
シカゴ連銀のグールズビー総裁は先週、関税によるインフレを懸念し、複数回の利下げを前倒しで行うことに反対姿勢を示した。一方、ボウマンFRB理事は、インフレ率はFRBの目標に十分近く、雇用市場の弱さを理由に追加利下げが正当化されると発言した。
市場のポジションも割れている。米国債オプション市場では、10年債利回りが11月末までに4%以下に低下すると見込む買いが継続している。一方、JPモルガン・チェースの顧客調査では、米国債の売り持ちが急増した。
政府閉鎖リスク
政府機関閉鎖のリスクがある中で、10月1日にADPが発表する民間雇用者数など、影響を受けないデータの重要性が高まっている。ADPのデータは公式統計の先行指標として必ずしも信頼できるわけではないが、最近は政府統計の下方修正が相次ぎ、民間統計の弱さを裏付ける形となっている。
コロンビア・スレッドニードル・インベストメントのポートフォリオマネジャー、エド・アルフセイニ氏は「ADPは非常に重みを持つ」と述べ、底堅い雇用データが示されれば「金利の道筋や来年の利下げタイミングを巡って多くの疑問が生じる」と予想した。
原題:Bond Traders Say Rally Hinges on Jobs Data at Risk From Shutdown(抜粋)
--取材協力:Edward Bolingbroke.
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