(ブルームバーグ):インドでは急速に拡大する富裕層市場に比べ、経験を積んだプライベートバンカーの供給が追い付いていない。こうした中、ある新興企業が従来の業界慣行にとらわれない戦略で存在感を高めようとしている。
デジタル資産運用企業Dezervは、大学を卒業したばかりの若者を数十人規模で採用し、人工知能(AI)を活用した研修を通じて、運用業界で活躍する人材を早期に育成するプログラムを持つ。
超富裕層との密接な人間関係に依存してきた同業界に、AI技術が浸透して変革を促しつつあることを示す動きだ。業界全体では人材争奪戦が激化しており、リレーションシップマネジャー(顧客担当者)の報酬は過去最高水準に達している。
ムンバイに本拠を置くDezervの共同創業者、サンディープ・ジェトワニ氏は「競合他社の大半は、経験のあるリレーションシップマネジャーやプライベートバンカーの採用に莫大(ばくだい)な資金を投じている。非常にコストがかかることだ」と語った。
同社は現在、約170人のリレーションシップマネジャーを抱えており、その過半数は経験者だという。
Dezervはテクノロジー業界で財を成したアジム・プレムジ氏のファミリーオフィスが支援する企業。2026年末までにリレーションシップマネジャーを新たに120人ほど採用する計画だ。その大半は大学を卒業したばかりの若者になる。
ジェトワニ氏によれば、DezervはテクノロジーとAIを活用して3-6カ月にわたって新卒者にトレーニングプログラムを課し、その後に顧客対応に当たらせる。
Dezervのプラットフォームには60万人のユーザーが登録しており、債券・株式投資、銀行預金、年金基金など、自身の資産状況を把握できるようになっている。こうした利用データが同社AIモデルの学習と精度向上に役立っている。
ジェトワニ氏はインドの資産運用会社360 One WAMに10年余り勤めた経験を持つ。
「投資に関するわれわれの知見をAIエンジンに落とし込み、それを通じて当社の専門性を広げていきたい」と話した。
原題:AI-Trained Grads Edge Out Costly Advisers at Indian Wealth Firm(抜粋)
--取材協力:Chanyaporn Chanjaroen.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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