夏の終わりに干ばつに見舞われた米北東部で、山火事のリスクが高まっている。ニューイングランド地方では一部の水路や井戸が枯渇し、ニューヨーク市の木々は既に葉を落とし始めている。

米国の監視機関によると、北東部で異常乾燥か干ばつの状態にある地域は現時点で80%余りと、昨年9月時点の11%から大幅に拡大した。まとまった雨が数週間降っていない地域もあり、1年足らず前にニューヨーク市と周辺地域で発生した大規模な山火事を想起させる状況となっている。

ニューヨーク州では河川流量の急減や地下水位の低下を受け、環境当局が住民に自主的な節水を呼びかけている。山火事リスクの高まりはニューハンプシャー、メーン、バーモント各州にも及び、バーモント州では2000年の観測開始後初めて干ばつが州全域に広がる事態となっている。

米北東部の大部分で干ばつ

米コーネル大学の北東部地域気候センター(NRCC)の気候学者、サマンサ・ボリソフ氏は、「域内の一部地域では今春から初夏にかけて比較的降雨が多く植物が繁茂した」と指摘。それが乾燥した上に、干ばつのストレスで樹木の落葉が数週間早くなったことで、火災の潜在的要因が増え続けていると話す。

今回の干ばつは夏場の降雨不足と関連しており、雨量は数週間にわたって平年を下回っている。

ニューヨークは2024年秋に記録的な乾燥に見舞われた

人口密集地では火災リスクはさらに高い。ニューヨーク市も例外ではなく、晩夏の数週間に散発的な雷雨があっただけだ。

米国立気象局(NWS)によると、マンハッタンのセントラルパークで8月の降水量は平年の半分未満にとどまり、夏全体では平年より5インチ(約127ミリメートル)少なかった。

ニューヨーク市消防局(FDNY)の消防活動責任者ケビン・ウッズ氏は、このため秋の火災シーズンを前に懸念が強まっていると説明する。ニューヨークは24年秋に記録的な乾燥に見舞われ、過去最多の山火事が発生。10月下旬から11月にかけての2週間にFDNYが対応した火災は229件に上り、隊員は疲弊し、リソース不足に陥ったという。

今年の秋に備え、FDNYは軽量の山林用ホースを大量に導入。隊員が遠隔地に手作業で運搬できるようにしたほか、追加ポンプを使い水源から長距離にわたって水を送り込む「給水リレー」の訓練も強化している。

予報では、年末にかけてニューヨーク市で干ばつが和らぐ可能性がある一方、ニューイングランドでは広範囲にわたって乾燥が続きそうだ。晩秋にはまとまった雨が期待できるが、干ばつ解消には不十分な可能性が高いという。

ウッドウェル気候研究センター(マサチューセッツ州)のシニアサイエンティスト、ジェニファー・フランシス氏は、干ばつを解消するためには通常、「しとしとと一日中続くような雨」が何度も降る必要があるが、気候変動が進む中でそうした降雨パターンは起きにくくなっていると指摘。

「乾燥が長く続いたり、逆に雨が長期化したりするなど、より持続的な気象パターンが見られている。熱波や干ばつもその一部で、火災の温床となる」と警告した。

原題:Severe Drought in US Northeast Raises Fears of Autumn Wildfires(抜粋)

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