ヘッジファンドが円のさらなる下落に賭ける一方、アセットマネジャーは円に対する強気のスタンスを崩さず、円の方向性を巡るせめぎ合いが激しくなっている。

米商品先物取引委員会(CFTC)の週間データによると、円を買い越しているアセットマネジャーと、円を売り越しているレバレッジドファンドのポジションの乖離(かいり)は9月に入り2007年以来の水準まで拡大した。

円に対する見方の相違は、国内政治の不確実性が日本銀行の政策運営を不透明にする中で、世界3位の取引規模を有する円への投資の複雑さを浮き彫りにしている。日本もトランプ米大統領による世界的な貿易戦争に巻き込まれ、日本の資産に対する投資家心理やかつて安全通貨と見なされた円の地位が揺らいでいる。

みずほ証券の大森翔央輝チーフ・デスク・ストラテジストは「ヘッジファンドは動きが速く、日本の政治リスクや金利の不確実性を売り材料と捉えたり、円を資金調達通貨として利用したりするケースもある」と話す。「一方で、円を割安と見る資産運用会社もあり、ヘッジの仕組み上、ドル・円ポジションを維持せざるを得ないケースもある」とし、「この二極化は続く可能性がある」と述べた。

22日のアジア市場の円相場は1ドル=148円台前半と前週末から小幅に下落して推移している。

円は主要10通貨の中で年初からのドルに対するパフォーマンスが最も悪い通貨の一つで、わずか6%程度の上昇にとどまっている。円と比較されることの多いスイスフランは同期間に13%以上上昇している。

外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長は「日銀が利上げするといっても、実質金利がこれだけ低いとなかなか円が上昇していく姿は描きづらいという見方もある」とし、「強弱に対する見方が対立している状況ではある」と述べた。

16日時点のCFTCデータによると、ヘッジファンドは日銀金融政策決定会合の数日前に円の売り越しを5万8811枚に拡大させた。一方、アセットマネジャーは円に強気のポジションをやや減らしたが、7万1162枚の買い越しを維持した。

足元のポジションの乖離は12年以来の大きさで、今月初旬に記録した07年以来の水準に近い。

日銀は19日の決定会合で政策金利を据え置いた。日米通商合意後も米関税が国内外に及ぼす影響について慎重に評価を続けている。会合では9人の政策委員のうち高田創、田村直樹の2人の審議委員が据え置きに反対し、投資家は今後の政策動向や円相場への影響を改めて見極めようとしている。

ナショナルオーストラリア銀行(NAB)のストラテジスト、ロドリゴ・カトリル氏は、アセットマネジャーとヘッジファンドのポジションは「極端に近いものの、そこまで極端ではない」と指摘。「現時点ではこれらのポジションがもう少し増加する可能性があるとの見方」を支えるものだと話した。

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