米株式相場は今年、世界的な貿易戦争や根強い財政懸念、9月特有の市場の停滞感にもかかわらず、懐疑的な見方をかわして記録的な上昇を続けてきた。しかし、足元では上昇基調の持続性に疑問を抱く投資家も出始めており、米経済の勢い鈍化が警戒されている。

S&P500種株価指数は4月初め以降に時価総額が15兆ドル(約2200兆円)拡大。今年に入り27回の過去最高値を更新している。ビッグテック銘柄がけん引し過去5カ月間の上昇率は34%に達した。ブルームバーグの集計データによれば、この記録を上回ったのは1950年以降でこれまで4回しかない。

米連邦公開市場委員会(FOMC)が利下げを再開したことも追い風となり、リスク資産への投資意欲は依然強い。ただ、関税措置でも経済が底堅さを見せている点や金融緩和といった好材料が既に株価に織り込まれているとの懸念もある。今後、経済成長見通しが暗転すれば、株価は失速する可能性もある。

シルバント・キャピタル・マネジメントのマイケル・サンソテラ最高投資責任者(CIO)は「米金融当局ともはや対立していないことは株式市場にとって良いことだ」と指摘。「だが、経済が大きく揺らげば、トレーダーはパニックに陥り、高値圏にあるビッグテック銘柄が真っ先に売り込まれる恐れがある」と警鐘を鳴らした。

 

先週の利下げは投資家に歓迎されたものの、貿易摩擦の負の影響を和らげるのに十分間に合ったのかは不透明だ。輸送大手フェデックスは18日、関税の影響と低価格品向け免税措置の廃止を受け、通期で10億ドル規模の打撃を見込むと発表した。

また、エコノミストは実質GDP(国内総生産)伸び率について、7-9月(第3四半期)は年率換算で1.5%程度と、4-6月(第2四半期)の3.3%(改定値)からの減速を見込んでいる。

消費者心理や米供給管理協会(ISM)製造業購買担当者景気指数(PMI)などの要素を測定するブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のモデルによれば、現在の米経済は2021年の力強い拡大期からは遠いが、リセッション(景気後退)と呼べる水準でもなく、まれな中間の状況にある。

BIの株式ストラテジスト、ジリアン・ウルフ氏は「米金融当局が利下げで経済成長を再加速させなければ、今年の株高のペースはすぐに冷え込む可能性がある」と指摘。また、S&P500種の予想株価収益率(PER)は現在23倍前後と、過去15年の平均から約2標準偏差上にある点にも言及し、これ以上の上昇余地を引き出すのは難しいとの見方を示した。

原題:Stock Market Rally Risks Losing Steam as Economic Bounce Fades(抜粋)

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