(ブルームバーグ):専門技術者が米国で就労するための「H-1Bビザ」について、トランプ米政権が申請手数料を10万ドル(約1480万円)に引き上げ、留学生などの間では不安が広がっている。
サンフランシスコで留学中の大学院生サティシュさんはインド出身だ。この秋に経営学の学位を取得しH-1Bビザを申請する予定だった。しかし今、米国でのキャリア形成に不安を抱えている。

サティシュさんは「米国に移り住む人は、努力して、より良い生活を築きたいと思っている」と語った。取材を受けた他の人々と同様に、自身のビザの状況が目を引いて将来の計画に支障をきたすことを懸念するサティシュさんは本名を伏せるよう求めた。
トランプ大統領は、新たに導入した高額手数料について米国民の雇用と国家の安全を守る取り組みとしている。これとは別に、100万ドルで永住権を得られる「トランプ・ゴールドカード」制度も発表している。
今回の突然の発表は、特にカリフォルニア州のテック企業に衝撃を与えた。これらの企業はプログラマーやデータアナリスト、エンジニアといった有能な人材を海外から招へいするためにH-1Bビザに頼ってきた。

21日に新制度が実施されるという突然の発表を巡っては、すでに同ビザを保有している場合でも適用されるのか不透明で混乱が生じた。企業は該当社員に対して直ちに米国に戻り、海外渡航を控えるよう求める措置をとっている。
ホワイトハウスは発表の翌日に次回の抽選から新規申請者にのみ適用すると説明したが、ビザ保有者の不安はほとんど解消されていない状況だ。
こうした中、大企業は採用計画への影響を見極めようとしている。アルファベット傘下のグーグルやアップル、メタ・プラットフォームズは何千人ものH-1Bビザの保有者を雇用している。スタンフォード大学やカリフォルニア大学などの大学に加えて病院も講師や研究者の採用に当たって同ビザに依存している。

外国人留学生にとって同ビザは、大学卒業後に米国に残る上で鍵を握っている。毎年8万5000件が発給され、このうち2万件は修士号以上の学位取得者に割り当てられている。常に大幅な需要過多となっており、2025年度の抽選では47万人余りが応募した。
移民が専門でニューヨークを拠点に活動する弁護士カリン・ウォルマン氏は、手数料は手続きの費用に基づくべきで、パブリックコメントのプロセスも経る必要があり、新たな手数料措置は「違法」だと話す。
さらに「大学や大学院を出たばかりの若手専門職人材にH-1Bビザが手の届かないようにし、資金に余裕のある大企業の上級専門職人材だけに限定することが目的だ」と指摘。スタートアップや中小企業、非営利団体、大学、病院はいずれも手数料が払えず、医療分野だけでも甚大な影響が出ると警告している。
サティシュさんは、少なくとも20人強の知人がインドへ帰国予定だと明かした。また、SNSでの発言が在留資格に影響すると恐れ、発信を控えている知人もいるという。なお、トランプ政権はすでにビザを発行する過程でSNSの審査も一部導入している。

原題:Trump’s Pricey H-1B Visas Alarm Prospects Aiming for US Jobs (1)(抜粋)
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