19日の日本市場では株式が反落。日本銀行がこの日の金融政策決定会合で政策金利を据え置くとともに、保有する上場投資信託(ETF)の処分を決定した。植田和男総裁は午後3時30分から記者会見し、「ETFなどの売却を進める上での有益な知見が蓄積された」と説明した。

シカゴ市場で日経平均先物は4万4700円台を推移し、大阪取引所の終値(4万4730円)と比べ小動き。円は対ドルで一時147円台前半に上昇した後、植田総裁の会見を受けて横ばい圏まで伸び悩んだ。債券は先物が下落して通常取引を終え、夜間取引ではやや買いが優勢だ。

19日の決定によると、日銀は保有するETFについて簿価ベースで年間3300億円程度を売却する。政策金利は大方の予想通り0.5%程度に据え置いたが、田村直樹審議委員と高田創審議委員の2人が利上げを求めて反対票を投じた。

りそなホールディングスの武居大暉ストラテジストは、ETF売却の発表は日銀の保有比率が高い大型ハイテク株を中心に売り圧力が広がるため、センチメントの悪化につながったと指摘。加えて、審議委員のうち2人が金利据え置きに反対票を投じており、利上げ観測がにわかに台頭してきたことも相場の重しになったと述べた。

自民党の高市早苗前経済安全保障担当相は午後、10月4日投開票の自民党総裁選で掲げる政策を発表した。午後2時30分からの記者会見では、「責任ある積極財政」を進めることで「強い経済」の構築を目指す考えを示した。

株式

株式は反落。日銀の会合結果発表後に売りが優勢となり、日経平均株価の下げ幅は一時800円を超えた。

インベスコ・アセット・マネジメントの木下智夫グローバル・マーケット・ストラテジストは、日銀のETF売却決定は足元で過熱気味だった日本株が持続的に上昇していくことを考えれば、良い冷や水になると指摘。売却額は限定的で、これまでの市場参加者の日本株に対する想定を大きく変えるものではないとし、相場は早晩落ち着きを取り戻すと述べた。

午前は米国の株価指数が最高値を更新したことや為替が円安傾向にあったことが追い風となり、日経平均は一時500円超上げて取引時間中の最高値を更新していた。

為替

東京外国為替市場の円相場は一時1ドル=147円台前半に上昇。日銀会合結果を受けて円が買われた。植田総裁の会見中に伸び悩む場面も見られた。

野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストは、日銀のETF売却はサプライズだとし、反対票が高田委員と田村委員の2人になったこともタカ派的と受け止められたようだと指摘。ただ、「これをもって2人が10月会合で主流派になるかと言えば、データ次第で分からない。10月利上げの可能性がものすごく高まったわけではなく、持続的な円高は見込みにくい」との見方を示した。

三菱UFJ信託銀行資金為替部マーケット営業課の酒井基成課長は、日銀会合はもともと政策据え置きとみていたため、反対票が2人出たがそれ自体にそれほど意味はないと指摘した。高市氏の会見については為替市場は特段反応はしていないと述べた。

債券

債券相場は先物や中長期債が下落。日銀会合で委員2人が金利据え置きに反対したことに反応した。

SMBC日興証券の田未来シニア金利ストラテジストは、高田委員と田村委員の2名が金利据え置きに反対したことで、利上げ継続を前提に中長期金利は上昇しやすいと指摘。超長期金利は落ち着き、利回り曲線はフラットニング(平たん化)してくだろうと語った。午後の植田総裁の記者会見では、委員2人の反対理由に関する質問への回答次第で相場が動くと予想した。

新発国債利回り(午後3時時点)

この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。

--取材協力:堤健太郎.

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