日本生命保険が海外向けのプロジェクトファイナンスの分野で融資を拡大している。人工知能(AI)を強化する米企業のデータセンター建設向けなどの需要が旺盛で、融資残高は3月末から1割増えて2025年度中に1兆円の大台に達する見込みだ。

同社ストラクチャードファイナンス営業部の芝田景部長が取材に応じて明らかにした。芝田氏は「データセンターの案件が昨年ごろからものすごい勢いで増えている」と述べた。その上で「規模も大きいし、スプレッド(上乗せ金利)もいい」と述べ、資金運用収益の拡大に寄与するとの認識を示した。

約80兆円の資金を運用する日本生命は、運用手段多様化の一環として、事業主の企業ではなく事業そのものが生み出す収益から利息と元本を回収するプロジェクトファイナンスを強化してきた。大手銀行が取りまとめる案件などに資金を拠出する。米プラットフォーム企業などが世界各地で建設計画を進めるなど環境の好転を捉え、収益拡大を図る。

日本生命の芝田景氏

融資先案件はインフラ関連が中心で、欧米の太陽光や風力発電、送電線設備のほか、道路や学校、淡水化プロジェクトなどもある。融資の平均年限は5-8年で、残高は毎年1000億円ほど増えているという。日本生命は超低金利政策下の17年に海外向けプロジェクトファイナンスに参入した。

足元ではデータセンターに付随して送電網設置の必要性も増しており、芝田氏は「データセンターおよびその周辺のプロジェクトファイナンスの機会がたぶん、今後かなり伸びてくる」とみる。米国でのニーズが圧倒的に多いが、欧州やアジアのデータセンター案件の引き合いも増えてきているという。

ブルームバーグNEF(BNEF)によると、22年に対話型AI「ChatGPT」が登場して以降、世界の主要データセンター事業者は総額5000億ドル(約73兆5000億円)超を投資してきた。25年上期のデータセンターのIT容量は半年で8.6%増加し、約70%が米国に集中している。センター建設の着工ペースは加速しており、さらなる容量増加が見込まれる。

芝田氏は海外向けプロジェクトファイナンスの収益性について、融資は変動金利のため、ヘッジコストの上昇を抑えながら、「一定のスプレッドがいつも見込める」と説明。足元の平均スプレッドは約200ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)以上を確保しているという。

これまでの蓄積で多様な国や通貨の案件への対応も可能になり、取りまとめ役の銀行から声が掛かるなど、「資産運用の中でもかなり有望な資産になっている」としている。ストラクチャードファイナンス営業部の陣容は約30人で、海外担当が約半数を占める。事業拡大に合わせ、専門人材のさらなる中途採用も視野に入れている。

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2025 Bloomberg L.P.