(ブルームバーグ):サマーズ元米財務長官は連邦準備制度理事会(FRB)の政策が緩和的過ぎる方向に傾いているとの見方を示し、米経済にとって最大のリスクは雇用ではなくインフレにあると強調した。
サマーズ氏はブルームバーグテレビジョンで「すべての金融情勢を踏まえると、現時点の政策は一般に見なされているよりもやや緩めだとみている」と述べ、「リスクのバランスは、失業よりもインフレの方にやや傾いている」と語った。

連邦公開市場委員会(FOMC)は前日、今年初めて政策金利を引き下げた。パウエルFRB議長は利下げ決定について、雇用創出の大幅な減速や、労働市場の軟化を示す他のデータがここ数週間で明らかになってきたと述べ、リスクバランスの変化を反映したと説明した。
サマーズ氏は「この状況で最大のリスクは、2%のインフレ目標とのつながりを失い、インフレ心理が根付いた国になることだ」と述べた。現在、サマーズ氏はハーバード大学の教授であり、ブルームバーグテレビジョンのコメンテーターも務めている。
同氏はさらに「金融政策とその発信という点で、やや緩めの姿勢にあると思う」とした上で、「ただし、あくまで程度の問題だ」と付け加えた。
FRB理事や地区連銀総裁は17日に公表した最新の経済見通しで、来年のインフレ率予測を引き上げた。FRBが重視する個人消費支出(PCE)価格指数の2025年予想は中央値で3%上昇。来年は2.6%上昇を見込んでおり、6月時点の予想である2.4%から上方修正された。
サマーズ氏は「もし自分がパウエル議長の立場にいるなら、最も大きな懸念はインフレの側にある」と述べた。
トランプ大統領やその側近らがFRBに利下げを強く求めていることについては、インフレ抑制への信頼性を保つ必要性を浮き彫りにしているとの見方を示した。
今回の利下げについては「政治的圧力に基づいて実施されたとは思わない」と述べた上で、「しかし、こうした局面では細心の注意を払って対応する必要があると思う。ただ、私が望んでいたほどには、十分に配慮しているとは言い難いかもしれない」と語った。
企業がより長期的な計画や投資に時間をかけられるよう、四半期決算報告廃止を主張するトランプ大統領の提案についても、サマーズ氏は批判した。大統領は6カ月ごとの報告制度に移行すれば「コストが節減され、経営陣は適切な会社運営に専念できるようになる」と述べている。
サマーズ氏は「まずい考えだ。そんな案に出番が来るべきではない」と切り捨てた。米国には世界で最も成功した資本市場があり、他国より一貫して株価収益率(PER)が高いのは、「規制や報告制度の枠組みが整っているからだ」と述べた。
米国の制度は透明性が高く、投資家は「安心して投資できる」とサマーズ氏は語った。その上で、企業はすでに長期的な構想に向けて資金を調達できており、利益もなく、場合によってはキャッシュフローも事業計画すらない企業でさえ資金を得ていると指摘した。
サマーズ氏は「誠実で公正な市場の理念は、内部者と外部の投資家との情報格差を縮めることにあった」と述べ、「今回の提案は、まさにその理念に逆行する」と批判した。
原題:Summers Says Fed Policy On ‘Loose Side,’ Inflation Top Issue (1)(抜粋)
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