高市早苗前経済安全保障相は18日、自民党総裁選(22日告示、10月4日投開票)に立候補する意向を表明した。19日に記者会見し、政策を発表する。

高市早苗氏

衆院議員会館で記者団に語った。高市氏は「総裁選に立候補する決意を固めた」と発言。今、必要なのは国民の暮らしや未来への不安を希望に変え、日本が直面する危機を克服する強い政治だと語った。

総裁選への出馬を明言したのは茂木敏充前幹事長、小林鷹之元経済安全保障担当相、小泉進次郎農相、林芳正官房長官に続き、5人目。石破茂首相と昨年の総裁選で決選投票を争った高市氏と3位につけた小泉氏を軸に展開する構図だ。

高市氏は金融緩和や積極財政を主張しており、総裁選でどのような政策を掲げるか市場でも注目されている。昨年9月の総裁選期間中に出演したインターネット番組で「金利を今、上げるのはあほやと思う」と発言。今年5月には別の番組で、食料品への消費税率(8%)を0%に引き下げるべきだとの考えを示していた。

日本銀行は19日に金融政策を決定し、植田和男総裁が記者会見を行う。政策は維持する見通しだ。みずほ銀行国際為替部の長谷川久悟マーケット・エコノミストは電話取材で、植田、高市両氏が行う会見で、ともに利上げに後ろ向きなトーンだと、円は最近のレンジを下抜ける可能性があるとの見方を示した。

林氏は政策発表

総裁選は党所属国会議員の295票と同数に換算した党員・党友票の計590票を争う。昨年の総裁選で石破首相が獲得した票の行方も結果を左右するとみられ、物価高対策や農政改革、日米関税交渉、地方創生など現政権が進めた路線の継承も争点となる。

林官房長官は18日午後の記者会見で、1%程度の実質賃金上昇の定着を目標に掲げた政策「林プラン」を発表した。農業政策では需要に応じたコメ生産による安定供給を確立するとし、石破政権の方針を継承する方針を示した。

独自の政策として、子育て中かなど世帯の状況に応じて低・中所得者を支援する「日本版ユニバーサル・クレジット」の創設を提唱した。

林氏とともに閣内で首相を支えた小泉農相も17日、首相が重視した防災庁設置や農政改革などの政策を「しっかりと引き継ぐ」と記者団に明言した。

一方、高市、小林、茂木の3氏は石破政権では要職につかなかった。高市氏は18日、参院選の全国遊説で「自民党が何をやりたい政党なのかよくわからない、政策から夢や希望を感じない」との厳しい声を聞いたと指摘。総裁選を通じて「ベストだと思う政策」を訴えると述べた。

茂木氏は18日、日本外国特派員協会で会見し、日本には資金も人材も技術もそろっているが、「それを生かし切れていないのは政治の責任だ。つまり今の自民党のやり方がだめだからだ」と指摘。この状況を転換するため、「前例主義や慣習から脱却し、霞ヶ関に頼り切った政治を終わらせる」と語った。

アベノミクス回帰

高市氏は2021年の総裁選で安倍晋三元首相の支援を受け、立候補した。2回目の挑戦だった昨年は党員票でトップに立った。安倍氏の後継者とされる高市氏が総裁に就任すれば、7月の参院選で参政党などに流れた保守票の一部を自民支持に引き戻す効果も期待できる。

一方で利上げに慎重姿勢を示すなど日銀をけん制した過去の発言から、金融緩和や財政出動を柱とした「アベノミクス」に回帰する印象を与える可能性もある。

しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンドマネジャーは、リフレ派として知られている「高市氏は候補の中で一番景気刺激策に積極的な印象がある」とした上で、昨年の総裁選から時間がたっており、以前の主張と同じことをやるのかどうかは分からないと述べた。

共同通信が11、12両日に行った世論調査では、次の自民総裁にふさわしい人として高市氏を挙げた回答が28.0%と最も多く、小泉氏が22.5%、林氏が11.4%と続いた。石破内閣の支持率は34.5%で6、7両日実施の前回を1.8ポイント上回った。

(林官房長官の政策発表の内容などを追加し、更新します)

--取材協力:日高正裕、我妻綾、関根裕之.

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