(ブルームバーグ):欧州はこの夏、記録的な猛暑に見舞われ、都市部で推計1万6500人が死亡した。気候変動の影響だが、それがなければ死者数は3分の1弱にとどまった可能性があることが、新たな調査で分かった。
この分析は、観測史上4番目の暑さとなった今夏の欧州に関する初期の知見を示している。イタリアからドイツ、フランスに至る地域を熱波が相次ぎ襲い、スペインとポルトガルの最高気温はセ氏46度(カ氏115度)に達した。スペインやイタリアでは屋外労働者が死亡した事例も報告されている。
英国の名門大インペリアル・カレッジ・ロンドンの気候学教授で、リポート共同執筆者のフリーデリケ・オットー氏は「これらの数字は実際に命を落とした人々を意味している。今のように化石燃料を燃やし続ける限り、死者は増え続けるだろう」と警告した。
17日公表されたリポートによると、気候変動の影響で、6-8月の気温はセ氏で最大3.6度高くなったという。この調査は、欧州の854都市を対象に、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院などの研究者と共同で実施された。

ただ、今回の調査は欧州人口の3分の1弱をカバーしているに過ぎず、実際の死者数がもっと多いことはほぼ間違いないと研究者は警告。別の調査では、欧州で2022年夏に6万人超、23年には4万7000人超が熱波で死亡したとされている。
欧州大陸は世界で最も急速に気温上昇が進んでいる。気候変動の影響は特に地中海沿岸地域で顕著で、観光業を中心に経済活動への打撃も広がっている。今夏はパリのエッフェル塔やアテネのアクロポリスといった主要観光施設が暑さのため一時閉鎖された。
カナダの救急医で、世界的な保健・開発関連組織のコンソーシアム「グローバル・クライメート・ヘルス・アライアンス(GCHA)」を率いるコートニー・ハワード氏は、猛暑は心臓により強い負荷をかけることで体にストレスを与え、心疾患を抱える人にとって大きな負担となると指摘。また、高温は大気汚染を悪化させ、ぜんそくや慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患を重症化させる恐れがあるとも述べた。
高齢者は猛暑の影響を特に受けやすく、体温を下げるための発汗機能も低下している。調査によると、気候変動に関連した熱波による死者の80%余りが65歳以上だった。
原題:Climate Change Linked to At Least 16,500 Heat Deaths in Europe(抜粋)
--取材協力:Eric Roston、Laura Millan.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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