世界の国債市場で利回りが上昇しているのは、金利が高止まりするとの見方を反映しているのであり、財政危機への懸念ではないと、ブラックロックは指摘した。

米国や英国からフランス、日本に至るまで、今年は長期国債の利回りが急上昇。利回り曲線は数年ぶりの水準までスティープ化が進んでいる。こうしたリプライシングの動きは、政府の巨額借り入れや財政赤字に起因するとされることが多いが、ブラックロックの投資・ポートフォリオソリューション責任者、アレックス・ブラジエ氏は異なる見解を示している。

「この世界的な動きは財政状況への懸念を反映したものではないと思う」と同氏は指摘。「むしろ、市場が考える金利の中立水準を反映している。さらに、短期ではなく長期債の購入を促すためのプレミアムも織り込まれている」と続けた。ブラジエ氏はブルームバーグのロンドンオフィスでインタビューに応じた。

 

中立金利は、景気を刺激も抑制もしない金融政策を指す。ブラックロックはこの中立金利が過去よりも高くなっているとみており、その背景には緩和的な財政政策に加え、特に人工知能(AI)分野での旺盛な投資支出などがあるとしている。

「これらの要因すべてが、経済を安定的に維持するために必要な金利水準を押し上げている」とブラジエ氏は説明した。

債券市場は長らく続いた低金利時代を経て、依然として新たな均衡点を模索している。ドイツの30年国債利回りはわずか4年前にはマイナス圏にあったが、現在は3.25%近辺で推移。英国の同年限利回りは最近、1990年代後半以来の高水準に達した。

2022年に当時のトラス英首相が打ち出した大型減税案に対する反応など、一時的に変動が生じた局面はあったが、利回り調整はおおむね秩序立って進んでいる。さらに、新規発行債には数十億ドル規模の需要が集まり、投資家の関心の強さを裏付けている。

財政改革への支持を得られず今週初めに首相が辞任したフランスでさえ、国債消化に苦労していない。長年にわたる放漫財政の結果、フランスの財政赤字はユーロ圏で最大となり、債務残高は1秒当たり5000ユーロ(約86万円)のペースで増え続けている。

それでも、フランスで先週実施された国債入札では、国民議会(下院)での信任投票を控えていたにもかかわらず旺盛な需要が確認された。ドイツ国債との10年物利回りスプレッドは、1月以来の高水準だった直近ピークの83ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)から78bpに縮小した。

ブラジエ氏はこうした動きについて、投資家が「最終的にはフランスが財政状況を立て直す」と見込んでいることの表れだと語った。

原題:BlackRock Says Fiscal Angst in Global Bond Markets Is Overblown(抜粋)

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