(ブルームバーグ):5日に発表される8月米雇用統計についてエコノミストは、雇用拡大が新型コロナ禍後で最も低調な局面がさらに続き、米金融当局による利下げはほぼ確実になると予想している。
ブルームバーグのエコノミスト調査では、非農業部門雇用者数は7万5000人の増加にとどまったと予想されている。実際にそうなれば、雇用の伸びは4カ月連続で10万人未満となる。失業率は4.3%に上昇し、2021年以来の高水準になると見込まれている。

ここ数カ月、企業は需要やコスト上昇への懸念に加え、トランプ大統領の通商政策による経済的不透明感を踏まえ、採用ペースを落としている。減速する労働市場を下支えするよう、FRB当局者には一段の圧力がかかっている。
サンタンデールUSキャピタル・マーケッツのチーフ米国エコノミスト、スティーブン・スタンリー氏は「労働市場は実質的に停止状態にある」と指摘。「企業は一時的に動きを止めており、状況が落ち着いた先がどうなるかを見極めようとしている」と語った。
EYパルテノンのチーフエコノミスト、グレゴリー・ダコ氏は、8月の民間部門の雇用増は主に医療や娯楽・ホスピタリティーがけん引すると予想している。ADPリサーチが発表した同月の民間雇用者数は5万4000人増と予想を下回った。娯楽・ホスピタリティーや建設、ビジネスサービスでは雇用が増加したが、教育・医療分野の雇用は減少した。
8月1日に発表された7月雇用統計では、ここ数カ月の雇用者数が大幅に下方修正され、多くのエコノミストや当局者の労働市場に対する認識を変える契機となった。大幅下方修正を受け、トランプ大統領は労働統計局(BLS)のトップを突然解任。今後の米統計の信頼性には懸念も広がっている。
バンク・オブ・アメリカ(BofA)のエコノミスト、シュルティ・ミシュラ氏は、2025年これまでに相次いだ修正を踏まえると、7月の雇用増も下方修正されるリスクがあると指摘。「当初の予測以上に労働市場の弱さが持続していることを示す可能性がある」と述べた。
8月雇用統計が大きく下振れすれば、9月連邦公開市場委員会(FOMC)会合での大幅利下げ観測を後押しすることになりそうだ。クレジットサイツのマクロ戦略責任者ザカリー・グリフィス氏は、非農業部門雇用者数の増加が3カ月平均で5万人を下回れば、その動きを引き起こすには十分だろうと述べた。
金利先物市場では、16-17日のFOMC会合では0.25ポイントの利下げが広く見込まれている。ただ、その後の会合での金利見通しはなお不透明だ。
ウェルズ・ファーゴの上級エコノミスト、サラ・ハウス氏は、根強いインフレと労働市場の弱含みという環境の下、政策当局者は「完全雇用」と「物価安定」という二つの責務の間で難しい舵取りを迫られていると指摘。今後の金利政策の方向性をめぐり、FOMCメンバー内での意見の相違や反対票が増える可能性があると述べた。
それでも、今後数カ月の政策判断を左右するのは労働市場になると同氏はみている。「少なくとも足元では、金融政策の方向性は雇用市場の動向により強く依存するだろう」と述べた。
原題:US Job Growth Likely Tepid for Fourth Month, Supporting Rate Cut(抜粋)
もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2025 Bloomberg L.P.