7月の米求人件数は減少し、10カ月ぶりの低水準となった。米政権の政策に不透明感が広がる中で、労働需要が徐々に低下していることを示す他のデータと整合する。

求人の減少はヘルスケアと小売り、娯楽・ホスピタリティーで顕著だった。ヘルスケアは今年これまでのところ雇用の伸びをけん引してきたが、2021年以来の水準に落ち込んだ。

統計発表を受けた金融市場では、米国債利回りが低下した一方、S&P500種株価指数は堅調を維持した。

米求人件数の推移

ルネサンス・マクロ・リサーチの経済調査責任者ニール・ダッタ氏は「求人の減少はヘルスケア・社会福祉と州・地方政府の2分野に集中しているようだ」とリポートで指摘。「こうした景気循環に左右されにくい市場はこれまでの雇用増を率いてきただけに、この減少は注目に値する。このような分野が落ち込めば、雇用者の伸びをプラスで維持するような他の分野は、ほぼ残っていないことになる」と述べた。

雇用主がトランプ政権の貿易政策が経済に与える打撃を見極めつつ、雇用に慎重になり、採用基準を厳しくしている状況が浮かび上がった。求人件数の減少だけでなく、雇用のペースも減速し、失業者が再就職するまでの期間が長期化している。

連邦準備制度理事会(FRB)は労働市場軟化の兆しを警戒し、関連データを注視している。パウエル議長は8月下旬の講演で「雇用に対する下振れリスクが高まっている」と指摘。今月の連邦公開市場委員会(FOMC)では0.25ポイントの利下げが決定すると投資家は想定している。

レイオフ件数は小幅増加し、昨年9月以来の高水準。建設業界での解雇増加を反映した。採用もわずかに増加した。

米金融当局が注目する失業者1人当たりの求人件数は1件で、前月とほぼ変わらず。2021年以来の低い数字が続いている。22年のピーク時には2件だった。

自発的離職者の割合である離職率は、2%で前月と変わらなかった。

労働省が公表するこの雇用動態調査(JOLTS)を巡っては、低い回答率や大幅な修正などを理由に信頼性を疑問視するエコノミストもいる。求人情報サイトのインディードが日次でまとめる類似の指数では、求人数は7月の早い時期に減少した後、持ち直している。

統計の詳細は表をご覧ください。

原題:US Job Openings Fell in July to Lowest Level in Nearly a Year(抜粋)

(統計の詳細や背景情報、エコノミストの見方を加えます)

--取材協力:Mark Niquette.

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