米国は、欧州の同盟国が北大西洋条約機構(NATO)の新たな国防費目標を達成するために、防衛関連支出を「非常に広義に解釈」することに否定的な見解を示した。世界最長のつり橋建設を軍事支出として計上する可能性を検討しているイタリアをけん制した形だ。

イタリアを含むNATO加盟国は6月にオランダ・ハーグで開催された首脳会議で、トランプ米大統領の要請に応じ、国防費支出を国内総生産(GDP)比5%に引き上げると約束した。

ただ、債務を抱え経済が停滞するイタリアがこの約束を達成できるのか疑問の声が上がっており、本土とシチリア島を結ぶ135億ユーロ(約2兆3000億円)のつり橋建設プロジェクトを防衛関連費用として計上する案に注目が集まっている。

これに対し、そんなに急ぐ必要はないと米国は警告している。

米国のウィテカーNATO大使は2日、一部の国が「防衛関連支出について非常に広義に解釈している」と、スロベニアのブレッド・ストラテジック・フォーラムでのインタビューで指摘。GDP比5%目標が防衛および防衛関連支出に限定され、それが真剣に受け止められていることが「非常に重要だ」と述べた。

米国のウィテカーNATO大使

その上で「軍事戦略的な価値のない橋」はこれに含まれないとの見解を強調。「状況を非常に注意深く見守っている」とし、今回のNATO首脳会議での優れた点は「2014年のウェールズ首脳会議と比べ、監視メカニズムが存在することだ」と話した。

イタリア国内では、一部の当局者や政治家らがこの橋を軍事資産として分類し、NATO防衛費用として組み込む可能性を検討している。

シチリア島には、NATO軍が使用しているものも含め幾つかの主要軍事拠点がある。政府が4月にまとめた文書では、この橋について「国家および国際的な安全保障にとって戦略的に重要」であり、「イタリアおよび同盟国の軍の移動を促進することで、防衛・安全保障の面で重要な役割を果たす」と位置付けている。

現時点では正式な決定は下されておらず、閣僚レベルで協議が続いている。

原題:US Pushes Back on Italy Counting Sicily Bridge as NATO Asset (1)(抜粋)

--取材協力:Andrea Dudik、Jan Bratanic、Donato Paolo Mancini.

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