(ブルームバーグ):暗号資産(仮想通貨)ビットコインの支持者が先週、香港に集結した。しかし、関心と熱気は西に向かっている。以前は仮想通貨と縁遠かった米国が、今やその中心地となっている。
仮想通貨マイニング(採掘)装置で世界最大手、中国のビットメイン・テクノロジーズは今、生産拠点を米国へ移しつつある。同社は、かつて中国が主導していた暗号資産業界の象徴とされていた企業だ。
中国の特別行政区である香港で開催されたビットコインのアジア会議に登壇したビットメインのアイリーン・ガオ氏は、最新モデル「S23 Hydro」について10億ドル(約1500億円)を超える事前注文を受けていると明かし、「全て米国で製造する」と述べた。同氏はマイニング部門プレジデント兼グローバル事業責任者だ。
そして、選挙集会のように来場者を盛り上げたのは、トランプ米大統領の次男エリック・トランプ氏だった。この会議で分かったのは、暗号資産は分散化されているようで、実際にはそのパワーが一カ所に集中しつつあり、今その中心となっているのが米国だという現実だ。

ガオ氏と共に登壇したのは、ビットコイン採掘などを手がける米ハット8の最高経営責任者(CEO)で、アメリカン・ビットコインの取締役でもあるアッシャー・ジェヌート氏だ。アメリカン・ビットコインは、トランプ大統領の長男トランプ・ジュニア氏およびエリック氏が支援している。
ジュヌート氏は、ビットメインと協力して6月に稼働を開始したテキサス州の広大なデータセンターを紹介。現在、単一の建物としては世界最大級のビットコイン採掘施設となっているという。
トランプ家の暗号資産政策
マイナー(採掘者)たちは、強力なコンピューターを使って複雑な計算問題を解き、取引の検証権と報酬としてのコインを得る。このエネルギー集約型の作業は、米国の施設へと急速に移行しつつある。
8月29日のセッションで、エリック氏はビットコインの価格が数年以内に100万ドルを超えるとの見通しを語った。共に壇上に立った暗号資産アドバイザー、デービッド・ベイリー氏はトランプ大統領が暗号資産支持に方針転換したことを称賛し、トランプ家の暗号資産政策を地政学的なものと位置付けた。
トランプ大統領が政権2期目発足後すぐに行った施策の一つが、ドル建てステーブルコインの成長を後押しする大統領令への署名だった。
これは、ドル覇権を守り、中国のような競合国に対抗するソフトパワーの行使として打ち出された。選挙戦でも、トランプ氏は米国製のビットコイン関連インフラ整備を国家戦略の一環として推進している。ステーブルコインは、価格安定を重視するよう設計された仮想通貨だ。
エリック氏はステージ上で、その姿勢をさらに強調。多くの仮想通貨取引を2021年以降禁止している中国について、暗号資産の分野では依然として「とてつもない強国」だと指摘。中東の台頭にも言及し、「今、米国がデジタル革命において勝利しつつあると本当に思う」と語った。
他にも業界の大物が多く顔を見せた。日本のビットコイン保有企業メタプラネットがスポンサーの筆頭として登場し、仮想通貨交換業者バイナンス共同創業者の趙長鵬氏もサプライズで姿を見せた。
それでも、注目の中心が米国から移ることはなかった。会場が最も沸いたのは、エリック氏が壇上で拳を突き上げ、自分の家族が銀行取引を停止されたとされる件を非難し、暗号資産業界への称賛を惜しまなかった瞬間だった。「ビットコインコミュニティーが父を歓迎する様子は、これまで見たこともないほどだった」とエリック氏は語った。
原題:Crypto’s US Momentum, Trump Ties Steal Show at Hong Kong Event(抜粋)
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