(ブルームバーグ):ドイツのメルツ首相とフランスのマクロン大統領は、ロシアの戦争遂行能力をくじくため2次制裁の導入を呼び掛けた。トランプ米大統領による和平への取り組みが失速する中で、ロシアに対する圧力を強める狙いがある。
29日に行われた独仏閣僚会合後に発表された共同声明によると、両国はロシアの石油収入を断つべく、「ロシアの戦争を支援する第三国の企業」を標的とした措置を推進する。
トゥーロン近郊でメルツ氏と並んで記者会見したマクロン氏は、「ロシアを交渉のテーブルに戻すため、われわれ自ら、および米国に制裁の強化を働き掛けていく。その準備はできている」と述べた。
トランプ氏はウクライナ問題を巡りロシアのプーチン大統領と表立って対立することに及び腰だ。これにしびれを切らしつつある欧州首脳は、対ロシア制裁の強化を自ら主導することで、トランプ氏に制裁強化を実行させたい思惑がある。
トランプ氏が直近で和平成立の期限として設定した2週間は、ほとんど明確な進展のないまま過ぎようとしている。一方、ロシアは今週、無人機とミサイルによる今年最大級の攻撃をウクライナに仕掛け、住宅を破壊し少なくとも4人の子供を死亡させた。
非公表の協議内容だとして匿名を要請した欧州の当局者によると、欧州はプーチン氏に対して圧力をかけたいが、同氏に戦争終結に向けた行動を確実にとらせるには、とりわけ制裁の執行面で米国の支援を必要としている。
ドイツとフランスは共同声明で、欧州連合(EU)や主要7カ国(G7)のメンバー国との協力を強化し、「より効果的かつ強力な制裁を拡大・発展させる」ことで合意したと表明。「ロシアに最大限の圧力をかけること」が目標だと説明した。
メルツ氏は「米国では現在、さらなる関税が議論されている」とした上で、「ロシアの戦争経済の大部分を賄っている同国産の石油やガスの購入国に対し、米国が追加関税を発動する決定を下すなら、自分は大いに歓迎する」と述べた。
EUはロシアのエネルギーセクターを標的とした2次制裁の議論を開始した。ロシアの制裁回避を第三国が助けることを阻止する狙い。EUではロシアの石油・ガス、金融セクターに対する別の措置も計画されている。

欧州委員会のカラス外交安全保障上級代表は29日、非公式の防衛担当閣僚会合を前にコペンハーゲンで記者団に対し、「われわれは次の制裁パッケージを準備しており、いくつかの選択肢が検討されている」と述べ、「当然、ロシアに最も打撃を与えられるのはエネルギーに対する制裁と、米国が実施したような2次制裁、金融サービスに対する制裁だ」と続けた。
独仏閣僚会合ではまた、ウクライナに「信頼できる安全の保証」を提供する必要があることでも合意。これにはロシアを抑止するため、「いかなる制限もない」軍をウクライナが維持することも含まれるとした。
一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は同日、キーウで記者団に対し、自身と欧州首脳がトランプ氏に来週「連絡を取り」、安全の保証について協議すると明らかにした。
原題:Merz, Macron Push for Secondary Sanctions on Russian Backers (3)(抜粋)
(第3段落以降を加えます)
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