金融市場で暗号資産(仮想通貨)が主流へと移行する中、ビットコイン上場投資信託(ETF)を活用してきた個人投資家はデジタル資産特有の価格変動サイクルを体験しつつある。

今年に入り、容易にアクセスできるETFには多額の資金が流入し、ビットコインが最高値を更新する一因にもなった。しかしその後、ビットコインは直近のピークから20%余り下落。多くのETF投資家はなお含み益を維持しているものの、損益分岐点との距離は急速に縮まっている。

K33リサーチによると、米国のビットコイン現物ETFへの累計流入額を基に算出した平均取得単価(コストベース)は約8万9613ドル(約1380万円)。これは、現在取引されているビットコイン価格を約11%下回る水準で、実質的にETF投資家の平均的な損益分岐点を示す。この水準は、ビットコインが今年の安値から反発した4月からの主要なテクニカルサポートゾーンとも一致している。

K33の調査責任者ベトレ・ルンデ氏は、「4月の反転局面とコストベースが合致していたのは非常に興味深い」と話す。

 

この点は、多くのETF投資家が高値を追ったのではなく、むしろ下落時に買い増したことを示唆する。だが、ビットコインが軟調に推移する中、この水準まで価格が下がれば投資家のポジションが一気に逆転する可能性もある。

一方、ETF経由の投資家は短期的な値動きに反応しにくく、これまでのところビットコイン特有の極端なボラティリティーを抑える安定化要因として機能していると、支持派は主張している。

しかし、ETFを通じて新たに参入した投資家にとって、今回の急落は教訓となった。規制対応型のETFであっても、ビットコインの値動きが緩やかになるわけではないということだ。

市場全体のムードも悪化している。ビットコインは4日に一時6%余り下落し、10万ドルを割り込んで6月以来の安値。前月に付けた最高値からの下落率が20%に達しており、伝統的な資産クラスで言えば、弱気相場入りに相当する水準だ。

ブルームバーグの集計データによると、最大のビットコイン現物ETFであるブラックロックの「iシェアーズ・ビットコイン・トラスト(IBIT)」には年初来で270億ドル超の資金が流入し、資産規模は約850億ドルに上っている。

ビットコインはこれまでに何度も50%を超えるドローダウン(直近の最高値からの下落率)を経験し、その都度反発してきた。ブルームバーグ・インテリジェンスのジェームズ・セイファート氏は、ビットコインに資金を振り向けている投資家はそうした性質があることを把握しているはずだと語る。

「この資産やETFは『二歩進んで一歩下がる』感じで進む」とし、「極めてボラティリティーの高い資産であり、暗号資産全体も同様だ。これが単なる一歩後退なのか、それとも大きな下落の始まりなのか、断言はできない」とセイファート氏は述べた。

原題:Crypto’s Retail Era Rattled With ETFs Facing $89,600 Pain Point(抜粋)

--取材協力:Isabelle Lee.

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