(ブルームバーグ):米政府のエネルギー統計機関であるエネルギー情報局(EIA)は、重要なウラン報告書の公表を延期し、太陽光発電の年次分析を停止した。トランプ政権による連邦職員削減の影響が産業データにも波及した形だ。
事情に詳しい関係者によると、定期的に公表されてきたEIAの報告書が途絶えた直接の原因は大規模な人員削減だという。イーロン・マスク氏を司令塔としていた「政府効率化省(DOGE)」による早期退職などを通じた合理化の取り組みにより、エネルギー省下の独立機関であるEIAは職員約350人のうち100人余りが削減された。
公表が延期されているのはウラン燃料の出荷データに関する年次報告書で、約3カ月遅れで来月公表される見込み。同関係者によれば、このデータ集計に携わっていた職員は、早期退職に応じてEIAを離れたという。
またEIAは人員不足を理由に、太陽電池モジュールの製造・輸入・輸出データに関する年次報告書の公表を停止。今後は廃止する予定だと28日に通知した。
ウランや太陽光関連の報告書は、世界の投資家やエコノミストが注視する原油・天然ガス関連データほどの重要性はないものの、発表が途絶えたことでエネルギー業界には不安が広がっている。
テキサス大学オースティン校のエネルギー市場・政策ディレクター、ベン・ケーヒル氏は「非常に懸念すべき事態だ。EIAのデータは業界や政府が重要な意思決定を行う際の材料であり、こうした職務とデータは極めて大きな意味を持つ」と指摘した。
EIAの報道官は「独立性と高い品質を保ったデータと予測を公表することに引き続き全力を尽くす」とコメント。太陽光関連の報告書については、データの有用性を見極めるため一般から意見を公募すると述べた。また「基準に満たないものを予定通り公表するか、品質を確保するために発表を遅らせるかの選択では、われわれは常に後者を選ぶ」と電子メールで説明した。
EIAはまた、世界的な長期需給モデルを扱う主要報告書「国際エネルギー見通し」を今年は公表しない方針を職員に伝えた。EIAのエネルギー分析担当次長、アンジェリーナ・ラローズ氏は職員宛てのメールで「重要な人材を失ったことを受けての苦渋の決断だ」と説明した。このメールを入手した非営利・独立系の米報道機関プロパブリカは報告書停止を先に報じていた。
原題:Key US Energy Data Delayed or Suspended as DOGE Staff Cuts Bite(抜粋)
--取材協力:Jonathan Tirone.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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