転換社債を利用したニッチなヘッジファンド戦略「コンバーティブルアービトラージ」に、理想的な瞬間が訪れている。

転換社債と原株の価格差に着目したハイブリッドな手法は、今年1-7月に6%近いリターンを上げ、ヘッジファンド戦略ランキングの中でも上位に入った。資産合計840億ドル(約12兆4300億円)のヘッジファンド120本をまとめたヘッジ・ファンド・リサーチ(HFR)の指数が示した。この戦略を採用したファンドへの年間資金流入も、過去18年で最大の伸びが見込まれる。

背景には企業の信用力の堅調さと小型株のボラティリティー上昇がある。小型株の中では特に暗号資産(仮想通貨)に関連した企業が、転換社債の活用を増やしている。

マン・グループのマルチ戦略クレジット・転換証券責任者、ダニーロ・リッパ氏は「安定した信用と高い株式のボラティリティーという前例のない組み合わせが起きている」と指摘。利益を得るには「完璧な環境だ」と語った。

アービトラージファンド資産の純流入額

新型コロナ禍当時に発行された転換社債の借り換え取引から始まり、現在は株式オプション部分の取引が主流になった。ブルームバーグがまとめたデータによれば、ラッセル3000指数構成銘柄のボラティリティー中央値(30日実現ベース)は40超と、指数全体の数値の4倍に達する。

ウェルズリー・アセット・マネジメントの転換社債ポートフォリオマネジャー、デービッド・クロット氏は「水面下では個別株のボラティリティーが見られる」と指摘。「高い株式バリュエーションに関税を巡る交渉継続、インフレと金利、それにあらゆる地政学的な波乱が加わり、ボラティリティーが続く要因に事欠かない」と語った。

決算シーズンで株価が大きく反応し、取引の機会はふんだんにあるという。一方で安定した信用が、この主要の取引に「債券の下支え」を提供しているとクロット氏は述べた。

債券コンバーティブルアービトラージ指数の運用成績

今月はエネルギーインフラ建設のフルアー株が決算への失望で50%近く下げ、アービトラージ取引に強い追い風が吹いた。一方で再生エネルギー企業のアレイ・テクノロジーズは新たな財務省指針が好感されて、株価は47%上昇。2028年および31年償還の転換債を手がける投資家を利した。

暗号資産関連企業が特に注目を集めている。マイケル・セイラー氏のストラテジー社がビットコイン購入資金の調達で転換社債を発行して以来、MARAホールディングスやコインベースも続いた。同セクターは転換社債市場の約10%を占めるまでになったと、カラモス・アドバイザーズのイーライ・パース最高投資責任者(CIO)は指摘する。最もボラティリティの高い資産クラスに結びつくことで、恒常的な裁定の機会が生まれていると同氏は述べた。

新発債の急増も上昇を助けている。バークレイズ・キャピタルによれば、米国での転換社債発行額は今年の年初から8月22日までで推定650億ドルに達し、すでに2023年通期の額を超えた。

バークレイズ・キャピタルのストラテジスト、ジャック・ルン氏は「新規発行の規模と多様性が投資機会を大きく広げた」と述べた。

原題:Hedge-Fund Arb Bets Triumph as Man Group Sees ‘Perfect’ Climate(抜粋)

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