(ブルームバーグ):米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は22日、ワイオミング州ジャクソンホールで開かれているカンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム(ジャクソンホール会合)で、インフレ懸念が残る中でも労働市場へのリスクが高まっていることを指摘し、慎重ながらも9月の利下げに道を開いた。
「失業率など労働市場の指標の安定により、われわれは政策スタンスの変更を検討する上で慎重に進むことが可能になる」と指摘した上で、「もっとも、政策が景気抑制的な領域にある現状では、基本見通しとリスクバランスの変化が、政策スタンスの調整を正当化する可能性がある」と述べた。
パウエル氏の講演に関する市場関係者の見方は以下の通り。
◎トレードステーションのデービッド・ラッセル氏:
パウエル議長は重視する責務を変更した。労働市場のスラックや国内総生産(GDP)成長の減速に言及したことで、重視する軸が物価安定から雇用の最大化へと移った。雇用の伸びは弱く、失業保険の継続受給件数も増加している。用心に越したことはない。
◎BMOキャピタル・マーケッツのベイル・ハートマン氏:
今回のハト派的なサプライズは、FRB議長が雇用に対する下振れリスクの高まりを認めたこと自体ではなく、そうしたリスクに重きを置いて今後の政策金利見通しを判断し、「リスクバランスの変化によっては政策スタンスの調整が正当化される可能性がある」と示唆した点にある
◎プリンシパル・アセット・マネジメントのチーフ・グローバル・ストラテジスト、シーマ・シャー氏:
確かに利下げの根拠は強まっているが、緊急対応レベルの0.50ポイントの利下げを正当化する経済的根拠はほとんどない。仮にFRBがそうした措置に踏み切れば、市場はそれをデータに基づく判断ではなく、政治的影響の表れと受け取る恐れがある
◎eToro(イートロ)のブレット・ケンウェル氏:
パウエルFRB議長が引き締め的な政策を転換する時期にきている可能性を認めたため、リリーフラリー(安心感による上昇局面)に向かう下地が整った。FRBは現在、インフレ加速に加え、労働市場が悪化の兆しを見せ始めているという難しい局面に直面している。雇用情勢は急変しやすく、FRBもそのリスクを十分認識している。
利下げを尚早に、あるいは過度に行えば、インフレが再燃するリスクがある。一方で、利下げが遅すぎたり不十分だったりすれば、労働市場、ひいては経済全体の深刻な悪化を招くおそれがある。この微妙なバランスこそが、FRBが難しい立場にある理由だ。
◎ アバウンド・ファイナンシャルのデービッド・ラウト氏:
9月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合までに雇用統計の発表がもう1回あるものの、9月利下げを正当化するのに十分なデータは既にそろっている。株式市場は一般的に低金利を好む傾向があり、パウエル議長が9月の利下げの可能性に言及したことから、短期的には強気トレンドが続くとみている
◎LPLファイナンシャルのジェフ・ローチ氏:
マクロ経済の見通しからすれば、FOMCは9月17日の会合で利下げを実施すべきだ。今後の利下げを示唆することで利回りは抑制され、短期的には相場の下支えとなるだろう。ただし、先行きについては、経済構造の変化により、フェデラルファンド(FF)金利に対する長期的な不確実性が生じている。
原題:Wall Street Has Best Day Since April on Fed Signal: Markets Wrap(抜粋)
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