(ブルームバーグ):米半導体大手エヌビディアが、サムスン電子やアムコー・テクノロジーなど部品サプライヤーに対し、人工知能(AI)半導体「H20」に関連する生産を停止するよう求めたと、匿名の関係者を引用して米メディアのジ・インフォメーションが報じた。
インフォメーションによると、中国政府がH20の使用を控えるよう国内企業に求めた後、エヌビディアはこの通知を今週出した。H20は中国市場向けに設計された半導体。
メイバンク・セキュリティーズで、機関投資家向け株式セールストレーディング責任者を務めるコクフン・ウォン氏によると、エヌビディア株はアジア時間の午前、代替取引システムのブルーオーシャンで約1.9%下落した。
生産停止となれば、エヌビディアの先端AIアクセラレーターに比べて性能が見劣りするH20の根本的な需要を巡り、疑問が生じる可能性がある。H20と競合する半導体を手がける中国の中科寒武紀科技(カンブリコン・テクノロジーズ)の株価は一時10%高。他の中国半導体銘柄も買われている。
エヌビディアと米アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)は最近、性能を落としたAI半導体の対中販売を再開する承認を米政府から得た。だが、関連収入の15%を米政府に納めるとの条件が付けられており、議論を呼び、法的にも疑問視されている。
一方、中国の顧客は国産半導体の採用を迫られている。世界水準の国内産業を育成し、米技術から脱却するという同国当局の目標があるためだ。
中国当局はH20の使用を控えるよう企業に通知を出したと、ブルームバーグ・ニュースは報じていた。米当局者は半導体が中国へ流出するのを抑えようと、位置情報で製品を追跡する措置の検討を進めていると明らかにする一方、中国はH20にはセキュリティーリスクがあると主張していた。
懸念に驚き
エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は22日、中国当局がこうした懸念を示したことには驚かされたとし、H20にはそのような機能やバックドアは搭載されていないと改めて強調した。
半導体受託生産大手、台湾積体電路製造(TSMC)と次世代半導体「ルービン」について協議するため、台湾を訪れているフアンCEOはトランプ政権次第ではあるものの、H20のフォローアップの可能性について米当局と協議中だと述べた。
フアン氏は空港で記者団に対し、「中国向けAIデータセンター用の新たな製品、H20の後継品を提供するかどうかはわれわれが決めることではない。当然ながら米政府の判断に委ねられる」と説明。「われわれは対話を続けているが、結論を出すには早過ぎる」と語った。
来週に決算発表を控えるエヌビディアは、同社製品にバックドアなどを組み込んでいるとの見方を繰り返し否定している。
エヌビディアの広報担当者は「当社は常に市場環境に対応するため、サプライチェーンを管理している」と回答。「両政府が認識しているように、H20は軍事用途や政府インフラ向け製品ではない。米政府が中国の半導体に頼らないのと同じように、中国も政府業務で米半導体に依存しないだろう。しかし、米半導体を有益な商業利用に認めることは誰にとってもプラスだ」と述べた。
アムコーの担当者に通常業務時間外にコメントを求めたが、すぐには返答がなかった。サムスン電子の担当者はコメントを控えた。
原題:Nvidia Asks Suppliers to Halt H20 Work, Information Says (2)(抜粋)
(エヌビディアCEOのコメントなどを追加し更新します)
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