14日の米金融市場では国債が下落(利回りは上昇)。7月の米生産者物価指数(PPI)がインフレの加速を示したことから、早期利下げの観測が後退した。円は対ドルで下落した。

短期金融市場が織り込む9月の0.25ポイント利下げ確率は約85%。前日は完全に織り込んでいた。

7月のPPIは3年ぶりの大幅上昇となった。関税に関連する輸入コストの上昇を企業が価格に転嫁しつつあることを示唆している。PPIは前月比0.9%上昇。前年同月比では3.3%伸びた。

今週発表された7月の米消費者物価指数(CPI)では、価格転嫁がそれほど進んでいないことが示唆され、労働市場も減速傾向にあることから、来月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合では利下げが行われるとの見方が広がっている。ただ、PPIの堅調な伸びが一部当局者の判断を慎重にさせる可能性がある。

ノースライト・アセット・マネジメントのクリス・ザッカレリ最高投資責任者(CIO)はPPIの急上昇について、消費者はまだ実感していなくとも、インフレが経済全体に行き渡っていることを示していると指摘。

「CPIの数字が抑制されていたことを踏まえれば、今回のPPIは極めて好ましくない上振れサプライズだ。来月の『確実視された』利下げへの楽観論はいくらか後退する可能性が高い」と述べた。

JPモルガン・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、プリヤ・ミスラ氏は「この日のPPIは市場に対し、一歩引いて状況を再評価させる内容だ」とブルームバーグテレビジョンで指摘。「スタグフレーション的なショックのただ中にある」と話した。

TJMインスティテューショナル・サービシズの金利ストラテジスト、デービッド・ロビン氏は「PPIは全体的なシナリオを変えるものではないが、市場が想定していた50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利下げ観測はいくらか後退させる」と述べた。

ベッセント米財務長官はこの日、連邦準備制度理事会(FRB)に一連の利下げを要求してはいないと述べ、予測モデルが示す「中立」水準が現行金利より約1.5ポイント低いことを指摘しただけだと話した。

前日のブルームバーグテレビジョンでの発言について、ベッセント長官は「FRBに指図したわけではない」とFOXビジネスとのインタビューで説明した。

外為

ブルームバーグ・ドル・スポット指数は上昇。円は対ドルで下落し、一時0.4%安の1ドル=147円96銭まで売られた。

コメリカ銀行のチーフエコノミスト、ビル・アダムズ氏は「関税は企業間取引での価格引き上げをもたらしている。いずれは消費者物価の上昇となって表れるだろう」と指摘。 「9月の利下げに反対する要因が今回の統計で一つ増えたが、FRBの次の政策判断に大きく影響するのはインフレ統計よりも、今後発表される雇用統計になる」と述べた。

サンフランシスコ連銀のデーリー総裁は、9月のFOMC会合で0.5ポイントの利下げを行う必要性に異議を唱えた。米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)の13日のインタビューで述べた。セントルイス連銀のムサレム総裁は、9月のFOMC会合で利下げを実施するかどうか判断するのは時期尚早だとの見解を示した。

株式

米株式相場は失速。S&P500種株価指数はほぼ変わらずで終了し、500銘柄中の350銘柄余りが値下がりした。一方、大手テクノロジー株の大半は上昇した。

インテルは急伸。トランプ米政権は経営不振に陥っている同社との間で、米政府が同社に出資する可能性について協議している。事情に詳しい関係者が明らかにした。

Stock rally wavers.

カルベイ・インベストメンツのクラーク・ゲラネン氏は、「PPIが予想以上に強く、CPIが比較的落ち着いているという事実は、企業が関税コストの多くを消費者に転嫁せず、自ら負担していることを示唆している」と話した。

シティー・インデックスのマーケットアナリスト、ファワド・ラザクザダ氏は、投入コストの上昇は7-9月(第3四半期)および10-12月(第4四半期)の企業業績に影響を及ぼす可能性があると指摘。ただし、株価の下げ幅は限定的で、投資家がまだそれほど懸念していないことが示唆されるという。

「FRBは今回のインフレ上昇を一時的なものと見なし、雇用市場への懸念から9月の利下げ再開に前向きになる可能性がある」と述べた。

先週の米新規失業保険申請件数は小幅に減少した。雇用主が人員削減に引き続き消極的なことが示唆された。継続受給者数は過去数カ月にわたって2021年以来の高水準付近で推移しており、失業者の再就職が難しいことも示唆される。

市場は米家計が景気をどう感じているか探るため、15日発表の7月の小売売上高と8月のミシガン大学消費者マインド指数に目を向けている。

原油

ニューヨーク原油先物相場は薄商いのなか反発。市場は15日に米アラスカ州で開催される米ロ首脳会談の行方を注視している。

会談の結果次第では、ロシア産原油に対する制裁が緩和、または強化される可能性がある。

CIBCプライベート・ウェルスのシニア・エネルギー・トレーダーのレベッカ・バビン氏は、市場はおおむね様子見姿勢だと指摘。米ロ首脳会談については「決定的な停戦合意も、トランプ氏が厳しい制裁措置を科すこともないというのがコンセンサスだ」と述べた。

ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物9月限は、前日比1.31ドル(2.1%)高の1バレル=63.96ドル。前日は2カ月ぶりの安値で終えていた。ロンドンICEの北海ブレント10月限は1.8%上昇し66.84ドルで終了。

金相場は反落。PPI統計を受けた利下げ観測後退が響いた。利息のつかない金は通常、金利が下がると恩恵を受ける。

金は年初来で27%値上がり。地政学リスクや貿易摩擦を背景とする逃避買いに加え、中央銀行による買いも押し上げ要因だ。

スポット価格はニューヨーク時間午後2時49分現在、前日比16.93ドル安の1オンス=3338.94ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は、前日比25.10ドル(0.7%)安の1オンス=3383.20ドルで終えた。

原題:Stock Rally Hits a Wall as US Inflation Picks Up: Markets Wrap(抜粋)

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