(ブルームバーグ):人工知能(AI)分野の人材獲得競争が激化する中、過去2年で株価が3倍強に上昇した企業でさえ苦戦している。
テーザー銃やボディカメラなど公共安全技術を手がけるアクソン・エンタープライズのジョシュ・イズナー社長は、次世代製品の開発に向けた技術者確保のため、過去1年で採用チームの規模を少なくとも倍増させたと明らかにした。同社はAIチームの構築を進めるため、目を見張るような高額保証給を提示する大手テクノロジー企業と人材獲得競争を繰り広げている。
イズナー氏は「われわれが持つもう一つの矢は、買収を通じた人材獲得だ」と指摘。技術が必ずしも大規模展開には向かなくても有望な人材を抱えるAIスタートアップを買収する戦略に言及し、「AI人材については、柔軟な発想が必要だ」と話した。
連邦・地方の法執行機関からの需要増を背景に、アクソンの株価は過去2年で約250%上昇しており、S&P500種株価指数の構成銘柄で屈指のパフォーマンスだ。しかしイズナー氏によれば、株式報酬を含む好条件を提示しても、マイクロソフトやアルファベット、メタ・プラットフォームズといった大企業が提示する報酬額には到底及ばない。
メタは最近、アップルのエンジニアを2億ドル(約300億円)超の報酬で引き抜いたとされ、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、別のAI研究者には10億ドル超の契約を提示したという。
イズナー氏は「われわれはメタやグーグル、マイクロソフトのような報酬を提示できない」と述べた上で、「インターネット上の広告販売ではなく、社会に貢献するテクノロジー企業で働きたいという理由で、多少の報酬を諦めても転職を決断できる人材を求めている」と語った。
アクソンは採用・定着施策の一環として、本社のあるアリゾナ州スコッツデールで従業員向け社宅を建設する計画だ。昨年はハーバード大学やマサチューセッツ工科大学(MIT)などからの人材確保を目指しボストンにも拠点を開設した。同地の従業員数はすでに数百人規模に拡大しているが、100万ドル超の所得に課される「ミリオネア税」がシニアクラスのAI人材獲得を難しくしているという。
同氏によれば、人材争奪戦の影響でアクソンはAI戦略をより慎重に検討するようになっており、既製のAI製品を活用して自社のニーズに合わせて調整する可能性がある。映像解析ツール向けに物体認識技術の向上に取り組む方針で、先月マンハッタンのミッドタウンのオフィスビルで発生した銃撃事件のような脅威を警察や警備チームに事前に警告できるようにする構想だという。
原題:AI Pay Gets So Costly That Taser Maker Is Hunting Acquisitions(抜粋)
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