(ブルームバーグ):4月の底値から4カ月ほどで市場価値を650億ドル(約9兆6000億円)以上高めた孫正義社長率いるソフトバンクグループの株価は、これまで以上にグローバルな人工知能(AI)ブームの行方が命運を握ることになりそうだ。
トランプ米大統領が1月に発表し、最大5000億ドルを投じ米国内でのAIインフラ拡大を目指す「スターゲート」計画でソフトバンクGは重要な役割を担っている。対話型AI「ChatGPT」のオープンAIや半導体大手エヌビディアへの出資で米企業との関係性も深く、市場では関税問題や国内外景気の現状、7日に発表される決算の内容以上にAIを巡る米国の動向が今後の株価に影響を及ぼすとの見方が多い。
岩井コスモ証券の川崎朝映アナリストは「AI関連投資の流れに加え、ソフトバンクGの業績や株価は米国株と連動する」と指摘。史上最高値圏にとどまる米国株や連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ期待がさらなる追い風になり得ると話す。
ソフトバンクG株のショートポジション(売り持ち高)は、22年に付けた直近ピーク水準の半分以下に減った半面、将来の利益予想は3年ぶりの高水準にある。同社の株価形成にとって重要な時価純資産(NAV)は英半導体設計のアーム・ホールディングスなど海外投資先企業やビジョン・ファンドの評価が中心のため、特に上昇局面では日本株よりも米国株との相関が高まる傾向が見える。
ソフトバンクG株は直近4カ月で2.1倍となり、日経平均株価構成銘柄の上昇率で6位。同期間の日経平均の上昇率31%を大きくアウトパフォームしており、この動きは大規模なデータセンターを運営する米巨大テック企業などハイパースケーラーが積極投資を続け、グローバルAI市場が回復したのと軌を一にしている。
オープンAIが自社評価額5000億ドルで従業員らの保有株を売り出す協議を始めたことが分かった6日、ソフトバンクG株は4.3%高と続伸し、7月25日に付けた上場来高値に再び迫った。
CLSAアナリストのオリバー・マシュー氏は、ソフトバンクGがスターゲート計画を発表した際には非常に強気な見方を示したと説明。同社が米国のAI拡大を支援する上で重要な役割を果たすと捉えたためで、その後株価は上昇したものの、「潜在的なAIの成長性を考慮すると、依然として大幅に割安な水準にある」と見ている。
現在のソフトバンクG株は、NAVに対し約40%ディスカウントされた状態だ。ビジョン・ファンド事業に対する投資家の慎重な見方に加え、AI向けの先行投資が利益を抑制しているアーム株の停滞が重しとなっている。
もっとも、7日の決算発表を前にソフトバンクG株はアナリストによる目標株価の平均(1万1783円)を上回って推移している。市場の12カ月先予想1株利益は平均で365円と22年以来の高水準にあるが、決算をきっかけに市場で上方修正期待が高まらないと、株価は利益確定売りに押される可能性もある。
モーニングスターのダニエル・ベイカー氏は、ソフトバンクGは開示する利益に重点を置かない珍しい企業だと指摘。アームの下落で決算発表後の株価は下落が予想されると言う。S&Pグローバルによると、ソフトバンクG株のショートポジションは浮動株の1.8%で、昨年12月から4%減。オプションのデータは、過去数年と比べ決算発表後の値動きが小幅になる可能性を示唆している。
アルファ・ビンワニ・キャピタルの創設者、アシュウィン・ビンワニ氏は「短期的な変動はあるかもしれないが、株式の値下がりは買いの機会」との認識だ。同社の私募ファンドは4月にソフトバンクG株を買い、最近利益を確定させたが、「現在は調整局面での再購入を検討している」と述べた。
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